ENo.0125　偽りの射ち手

　夜、人もバイオも寝静まった頃。
　片目に火を帯びた一つの影がキールヘイズへと忍び寄る。

〈　なんだこれは、全く以て美しくない　〉
「……バイオ兵器」
〈　こんな姿になってまで動かされているとは……全く、少し近付いてみろ　〉

　そうして目をギリギリまで扉へ近付けると、そのハッチへ片目を真っ直ぐに向け……所有者だったはずのハイドラに対して、ハッキングを仕掛ける。

「エンド、オープン」「……本人認証？音声入力が必要だとか」

　名前の確認が必要です、などと表示された少し埃っぽい液晶に向かって、社長から伝えられた言葉を発声する青年。

「俺は、俺だ」

　扉が、開いた。操縦棺の中に居た……居た、で良いのかはわからないが少なくともその機械へ適合しているらしいバイオ兵器へ、片目を通してプログラムを刻み込む。

〈　これでいい、あとは勝手にパーツを買い付けてくれる　〉
〈　ついでに、このその場しのぎのような脚をどうにかする方法も提示しておいた　〉
「見られない内に離れないと」

　すべきことを終えた人影が小さくなる頃、無限軌道から伸びていたバイオ兵器の簡易脚部はしまわれはじめていた。

それは地中に出来た、真っ直ぐに伸びる洞窟のような空間だ。

一つ明かりを付けたのなら、きっと貴方はそれが人工のトンネルのようなものだと気付くだろう……そう、丁度中型のハイドラが通るほどの。

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