ENo.0052　ギベオン

「……」
　とぼとぼ室内を歩いていた時のことであった。

「…ナナキ」
「んえっ?! な、なんでしょ?」
　荒れた室内、中央に鎮座するソファベット。聞けばこの状態、ギベオンの住まいの環境に非常に似通ってるとかなんとか。
　『リラ』を格納庫に固定している間の、身を休める空間としてうってつけらしい。この荒くれた異形の巨漢には…
「……?」
　よく見たら手招きしている。寝たまま、視線を合わせることなく
「(ええ～っ何?何かあるの? 近付きたくないなあ…)」
　その奇怪な容姿もさることながら、寝起きで物に当たり散らすような荒れ具合から近寄りがたい。しかし…
「(うう、でも怒らせるのもなんだし…)」
　恐る恐る近付く。


「ぴゃっ!!?」
　場合によっては逃げようと思っていたのが、その目論みも甘かったようで、思った以上の伸縮性と拘束力を備えた触手にあっという間に捕らわれ、寝転がっているギベオンの上にそのまま乗せられた。


「……」
「……」
「…………」

　それだけだった。それきり、何も状況は変わらない。やや息苦しいくらいにしがみつかれたまま時間が過ぎた。

「(どういうことなの…僕、抱き枕にでもされてる??)」

此処には肉体のアセンブルがおかしい奴がいる