ENo.0002　キリト・閃鐳・イサラギ

──……これは、とある霧の彼方の物語。

──数日後。

キリトは、残像領域の戦場にいた。
依頼人から仕事を請け負い、
下された命を全うすべく、己の全神経を戦場に向けていた。

「…」
「G.I.M.S.、戦況は」

《Notice,索敵範囲にWHEN反応、粒子反応、ありません》

「そうか」
「…視覚信号一時遮断、戦況が落ち着くまで待機する」

《Sir,HLS視覚信号一時遮断します》

カチャリ、とゴーグルを額へ押し上げると キリトはふぅ、とため息を吐いた。

「…」

《キリト、どうかしましたか》
《本日の戦闘は随分と戦闘意識が途切れがちに……──わかりやすく言えば気が散っていたように見えましたが》

「後でわかりやすく言うくらいなら最初から言え」
「…ハー…」

「…そうかも、しれない」

《久々にロニーさんのことを、思い出していました？》

「…おい」

《血圧上昇、心拍数変化を確認。図星ですか？》

「お前な」

《いえ、ただ。先日牙にてロニーさんの妹さんとお会いしていたようですので、憶測発言……──つまり、あてずっぽうです》

「…聞いてたのか」

《Yes,索敵範囲内の音声波形は全て受信、記録済みです》

「そういうのはやめてくれ」

《Can't,GovernInfluenceMistEffectSystemとしての自動行動です》
《当システムに対しての意見・質問・要望は開発元のケルブレムシステムへ……》

「わかった、わかったから黙ってくれ」
「…」
「…そうだよ」
「妹がいるとは聞いたことはあるが、まさか俺を訪ねてくるなんて夢にも思っていなかった」
「あいつは戦場で死んだんだ　妹がそれを知らなくても当然だろう」
「だからと言って、俺ができるのはあいつの死を伝えることだけだが、な」

《過去音声記録を確認しましたが、ロニーさんは報酬の一部を妹さんへ仕送りしているとの発言をしています》
《仕送りが途絶えた故に妹さんはキリトを金銭面で頼りにしてきた可能性があります》

「俺を？」
「ふん、どうして俺がそこまで面倒を見なくちゃいけないんだ？」
「ロニーは俺の相棒で、閃鐳の一員だ。だが妹はそうじゃない》
《大体、他人の手柄を吸って生きようとするやつには虫唾が走る」

《キリト、先の発言は私の憶測に過ぎません》
《妹さん個人の批判するには不適切な…──キリト、中立軍機から緊急通信。音声データ確認、繋げます》



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「！？」

「モニカ・フランクリン…！？」

《Likely,先日牙にいらしていたロニーさんの妹さんと同じお名前ですね》

「……！？どういうことだ！？」

《Question,キリト、救援に向かいますか？》

「くっ」
「GIMS,該当機に救護応戦信号！HLS、視覚信号操縦信号接続！」

《Sir,all》


「くそ…何が一体どうなっている…！？」