ENo.0013　ロコ・シュタール

この戦場に紛れたのはほんの出来心だった。それはもう、此処に迷い込んだ日からいつの間にか手元にあった、ハイドラライダー？とやらのライセンスをこのまま使わずにいるのもなんだし……程度の。

でも、何気に手に取ったこの部品がもし……もし本当に“あの色”を見せてくれるものなら、それだけでも俺がここに来た甲斐はある。魅せられ様によっては生涯この地を這いずり回ることになりそうだ。
生き急ぐようだけど、別にそのようなつもりはない。俺だって人生はマイペースに満喫したいと思っている。
ただ、あの至高の愉悦の為ならば命も惜しまないというだけ。……一昔前の時分ならもっと正気な考えを持ったかもしれないけど、残念ながらもう戻ることはないだろう。


霧の濃さによる不安は無く、寧ろこの《領域》で間近に見る戦争の景色はどんなものなのだろうという期待に舞い上がっている。“あの色”が見られるなら尚更。

改めて掌の中にある装置に目を向け―――自然と口元が歪んだ。