ENo.0055　クラトス･イェーガー

○月○○日
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らしくねぇな、こんなモン書くなんてよ。
だが俺が行くのは戦場だ。
さすがにまだ敵共も本調子じゃねぇのは一緒だろーが
初陣ってもんだし『相棒』もまだ完全に出来上がってるわけじゃあねえしな。

少しでもこういうモンは遺しとくにこしたこたねぇ。

そういやリズが弁当をよこしやがった。
サンドイッチっつうのはコックピット内で食えるようにってことだろーが……
「味の感想を」とかいうメモ書きにゃあどうにもこうムシャクシャしやがる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クラトスの日誌より
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粗末な小屋の前に　誰かを見送ったのか二人の人影があった。

リズレット「兄さん……」

片方の女性は目に涙を滲ませ、うつむいている。
彼女の言う『兄』はかの戦にでも向かったのだろう。

そんな女性とは対照的にもう一人は


フレデリック「姉さん!　あんなバカ兄さんなんかのために泣いてやるもんじゃないよ!」

声を荒げて『兄』のことを罵倒しだした。
この少年、焦点の定まらないくすんだ眼からして　盲人なのだろう。


リズレット「フレン、そんな言い方はないわ!　兄さんは貴方のために……」

戦に赴けば命を懸けただけの富が手に入る。
貧しい彼らにはそこまでしなければこの少年の病の治療費を用意できやしないのだ。

フレデリック「姉さんは兄さんに何かあってもいいっていうの!?」

少年はそのようなことを望んではいないだろう。
可愛さ余って憎さ百倍　というのも違うだろうが　兄を散々に言うのはそのせいだ。

リズレット「……ちがう、わ。　でも……」

無論妹である彼女も兄の無事を何より願っており、
できれば戦にだって行ってほしくはないのだろう

リズレット「私には何もできない……　いえないわ……」

……が彼女は姉でもある。
兄が弟のフレデリックの病を危険を冒してでも治さんとするのを
とめることなど彼女にはできないのだ。

フレデリック「姉さん……ごめん……」

元はといえば自分がこうならなければと
少年は何一つ映さぬ双眸の節穴さを呪うしかなかった。

彼がどう『それ』を気にかけずとも 兄と姉にとって
それは弟から取り払ってやりたいことであるのは変わるはずがなかったのだ。