ENo.0197　球世記ガンスフィア

ここの戦場は霧が濃くなることが多い。
ハイドラの発する蒸気―――あるいは噴出水が、大気の水分濃度を高めるからだ

少女はそんな生暖かい空気を鬱陶しそうにしながら「暑い」とごちる。
もともと薄着なためこれ以上脱ぐものもなく（彼女自身は別に脱いでもいいと思っているが、何故か頑なにロボットに止められるので渋々我慢をしている）、仕方なしにだるそうな表情のままキャンプの中へ戻っていった。

時折、近くの区画で戦闘が起こっているであろう金属のぶつかりあう音と、銃声が聞こえた。

テーブルのうえで休息中のロボットの親友をさっと抱きかかえてベッドへ飛び込む。

「眠れないのですか？　マスター」

「べつに。そとが暑いから、つめたいベッドが心地いいの」

少女はひんやりとしたベッドに顔をうずめ、退屈そうに足をぱたつかせる。

「つぎの出撃、いつかな？」

「さあ…？まだ報告にはあがっていませんが」

「…暇になっちゃった。」

「どうせすぐ情報が来るでしょう、メンテナンスはできるだけ怠らないよう、お願いしますよ？」

「んー…。」

気のぬけた返事に、ロボットはすこし呆れ気味に溜息の音を発した。
実際に、次の出撃はもうすぐだろう。ハッチの奥に格納された球体装甲が、それを察するかのようにひらりと光を反射した。