ENo.0019　ハーヴェイ＝アボット

謎めいた強度を誇る遺跡の戦闘から一夜が明けた。
今日もまた、霧に煙る一日が始まる。
…そう思っていた。
「冗談だろ」
窓から見える景色に呆然として、咥えていた歯ブラシが床に滑り落ちていく。
この残像領域で決して晴れる事がない―――と個人的に思っている霧が、何時もはジャンク街の建物や往来の人間を包み隠してしまうあの霧が。
「今日に限って、ほとんど出てないじゃないか…！」
昨日とは打って変わった街並みに、傭兵稼業の男は頭を抱えるしかなかった。


―――来週の霧濃度：40％
―――来週の電磁波：40％
………霧濃度40％？前の日と50％以上も差があるぞ…！
俺のランバージャックが近付かなければ敵機を斬れない一方、非合法都市に滞在する盗賊達はほとんどが射撃戦仕様ときた。
早速、頭の中で嫌なイメージが湧き上がる。
視界が確保された戦場で火を噴く『トロピカル』
粒子を振りまく『カレイドスコープⅡ』
こちらを睨めつける重戦車砲『サハラ』の砲身―――



ぞくりと背筋に悪寒が走り、男はただただ青褪める。