ENo.0224　オリヴィエ・マール・クラインミヒェル

俺は二度も死に損なった。

一度目は空も大地も赤かったあの戦場。

二度目はそう、悪夢そのものだった帝都の瓦礫の中。

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オリヴィエが1回目の戦闘を終えて帰還すると、帝国陸軍武装統括局の職員が出迎えた。

「ご無事で何よりです、マール伍長。如何でしたか？残像領域の戦場は」

帝国陸軍武装統括局・残像領域支部。
支部と言っても人員は戦闘員のオリヴィエと、機体の整備や本国との通信・物資調達を行うスタッフが数人。
大戦が終わり、今の帝国では国内の復興と治安維持が最優先事項とされ、世界間転移による異世界の技術獲得に割ける人員はごく僅かだった。

「いかがもクソもあるかよ。霧が濃くて何も見えやしねェ」

頭を掻きながら吐き捨てる。
霧が出るとは聞いていたが、予想をはるかに超える濃さだった。
湿気のせいか、オリヴィエの癖毛は三割増しで跳ねていた。

「レーダーを強化しておきます。ですがやはり、その機体は試作型ですし色々と限界があるかと」

最新型であればもっと安定した性能が出せたのでしょうが、と溜息をつく職員をじろりと睨む。

「仕方ねェだろ。最新型はぶっ壊されちまったんだからよ」

いくつもの試作を経て完成した最新型のターピア、【悪夢喰らい】の最終形は戦闘で失われた。
残っているのは何体かの試作型のみだ。
不要になったからと処分されるところだったのを残像領域支部の研究員が引き取ったと聞いて、オリヴィエは此処に来た。

あの地獄のような戦場で共に駆けた機体の名残を求めてか、はたまた軍人崩れと後ろ指を差される現実からの逃避か。
ターピアの名に引き寄せられるように、オリヴィエ・マール・クラインミヒェルは再び戦場に立った。