ENo.0206　モニカ・フランクリン

　残像領域が霧に覆われているってのは前から聞いてたけど、想像以上だった、っていうのがこうして街を歩いてる私の感想だった。いつもなんとなく気分が晴れない感じがするのはそのせいなんだろうなってくらい視界は常にスモーキーでグロッキー。ベンチに腰掛けてため息をつく。
　でも霧を除けば街の雰囲気はずっと暮らしてたジャンク街とそう大差ないって感じで雑然としてるので、迷ったりとかはあんまりないのは助かってる。
　買い出しとかもそこまで困らなかった。住まいをハイドラライダー向けの格安寮に定めたのも悪くない選択だったんだろう。そういう層のためのお店が結構近くに立ち並んでるので日用品にはある程度困らずに済むって感じだったので。流石に女性用のなんとかみたいなのはちょっと遠出になったりもするけどやむかたなし。

「……ううーん」

　家にいてもやることないし、で街に出たまでは良かったけど、結局街に出てもやることないしってことに変わりはなかった。買い出しもこの前ある程度済ませてしまったのでどうにもこうにもって感じ。一人暮らしだと気楽にものを溜められるからいいなって思った。持ち出されたりとか壊されたりとかを気にして隠す必要もないし。これ一人暮らしだからって問題でもないか。
　そう、一人暮らしだから、部屋は当然狭いけど結局大差ないし、なんにせよ完全にパーソナルなスペースが許されているので置く場所にもそう困らないので、割と何買ってもいいっちゃいいはずなんだけど、そう思うと無駄遣いが怖いので結局買い物も控えてしまうって感じなのが今。外に出てみたはいいけど、外に出るとお金使うんだなあ、ってのも再確認しちゃって結局カフェに入るでもなくベンチに座ってるのも今。
　コーヒーとか紅茶とか、結局家で飲んだ方が安いしなー。借金してるんだしいつ出費が入り用になるかも分からないと思うとなかなかどうしてこれが如何せんという感じでして。
　じゃあ何か日用品とか暮らしに役立つものとか、例えば収納用品増やしたりとか、服引っ掛けるハンガーラックみたいなもの買ったら便利かなーとかも思わなくもないんだけどでも結局今の家って寮じゃん？　って思うとそれもなかなか悩ましくなってくる感じ。
　寮だし、しかもハイドラライダー向けの寮だから、ハイドラライダーやめたら出ていかなきゃいけないわけだし。そうなったときに処分すること考えると買うのも面倒になってくる。確かにあると便利だろうけど別にちゃんとラックにかけとかないといけないような服もないしなっていう。今でも思ったより生活が回ってるから多少の不便に目を瞑った方が出てくとき楽だぞーみたいな。
　ハイドラライダー、今のところやめるつもりはないけど、まだ始めたてなので結局分からないっちゃ分からない。思ったより向いてるかもとはちょっと思ってるけど調子の乗り始めが怖いんじゃないかとも思うので。一回やらかしたら出費ヤバそうだし。キリトさん貯金あったのかな。まあなきゃ大変だったろうしあったんだろうなんかしらは。私はそりゃ今は予算に残高あるけど貯金あるって感じではないしな。
　だから結局お金を使う気にもなれずにこうしてベンチでため息ついてるわけだけど。

「……根暗だ……」

　面白くないなー私。思わず頭を抱える。これも全部霧のせいにしたーい。無理かな。