ENo.0276　ローデット・ダイス

『信頼』っていうのは信じると頼るが両方あってこその言葉だと思う。


「あー、終わった。サポートとしては上々かね」


敵に与えた誘発と味方に与えた索敵のデータを眺めながら弄る。
通信データを探りつつ、自分の欲しい情報を探すが、戦場でも、結果のデータでもそれらしきものは見当たらない。

（しっかしサポートとしてはもう少しおっさんの支援したいが……敵は見失っちゃないから、行動回数か）
「その辺りはおっさんだってハイドラ乗りだ、分かってんだろ」


前線は前線に任せよう、
そう思いデータを閉じてヘッドホンを外し、フードを脱いだ。
バルトのおっさんは今までで出会った中では一番信じられる。
頼れるかって言われたら、まあその辺の野郎よりは頼れる、はずだ。
この戦場といういつ縁が切れるかわからない世界で、
腐れ縁の僚機で、それでいてハイドラに乗って生き続けてるおっさんのことだ、そう思いたい。



「今のところハイドラとのリンクは順調みたいだな、目立った損傷もなし」

「あとはお前がもうちっと腕よけりゃいいんだが……」

「自分より腕がいい人は沢山いるさ。なんだったら、博士に頼めばいいじゃないか」

「……お前あいつが私に何したか覚えてるか？」

「女じゃなくて男にした？」

「それじゃねーよ、わざと言ってんだろ」


前の私の体やウォーハイドラのメンテナンスをしていた奴は
研究費用として私の片目を売りに出した。
どれだけ大事なものか知っていただろうに、それでも探究心に勝てなきゃこっちのものだろうとお構いなしだ。
今隣にいる私のメンテをしている野郎はそいつの元助手で
何で私についてきたかと言えば「ヴァリアブルを見てそれを研究したい」と言われた。
体の構造知らない奴に弄られるよりマシだが、こいつも探究心でイカれてんなとは思った。
こいつら研究者は頼りにはなるけれど、信用はできない。



「ああ、そういや今度バルトのおっさんに誘われて飲みに行くんだ」

「別に飲むのは勝手だけど味覚があるからって飲めるって思うなよ、錆びるぞ。
その時はちゃんと修繕費かかること覚えておけよ」

「げ……腕直すより先にそこら辺どうにかしてくれよ」

「もう少しで開発して対応できるってところで逃げたお前が悪い。俺だとまだそこまで技術が追いつけない」

「さっさと追いついてくれ……腕だけは頼りにしてるんだから」

とあるものを求める為の集まり場。
それが何であろうと構わない、情報収集の場でもある。


制御*5、ユニオン購入は適当