ENo.0316　リビー・ニエロ

　
【………ザッ、……ソレ……、ザザッ……、ブツッ………コチ、ラ……、……ラハ……イジョ……、ッ、ザーーーーーーーー】

ブツ、ブツ、ブツ、と細切れになった後、ザッ、ザザーーー、というノイズを最後に、音声はいよいよ聞き取れなくなった。リビーが手の平を目に当てる。頭が痛い。音声通信を諦め、リビーは端末のエンターキーを押して用意していたデータファイルの送信だけ行った。先に出撃したリソスフェア要塞攻略戦のデータを含めた定時報告だ。

「クソッ、音声はやっぱ無理か、つか、こっちから送ってんのは無事に届いてんだろうな」

画面に流れる通信エラーリストに目を通しながらリビーが唸った。リアルタイム双方向の通信は端から諦めている。映像通信も。しかし映像どころか音声のみの受信でさえこれほど阻害されるとは思わなかった。それも、だんだん酷くなっている気がする。定時報告の通信網と黒金乱眼のシステム用回線が生きていることだけが救いだ。それでもこちらから請求したデータは揃っていなかったし、所々に破損があった。ということは、こちらが送ったデータもどうなっていることか。

「程度はお察し、ってことだな。どうしようもない」

肩をすくめて、手にしていた煙草を根元の方まで一気に吸った。紙巻が、じじじじ、と音を立てて勢いよく灰になる。こんな吸い方を咎めるものはここにはいない。吸い差しを灰皿で捻り潰し、勢い良く煙を吐く。こう苛ついてばかりだと煙草の本数が加速度的に増えるのがたまに傷だ。リビーは煙草があればあるだけ煙にするような男だが、実のところ、なければないで平気だった。しかし最近は手元になくても吸いたいような気分になることが多い。

「Gl-cell抑制薬と一緒にニコチン中和剤でも注文するか？」

皮肉げに歪めた唇へ二本目を咥えながらぼやくリビーの青い目は、過去と未来の隙間を眺めるように細められていた。
ガレージは薄暗く、薄っすらと靄がかかったように白い霧が忍び込んでいる。それは煙草の煙と混じり合い、いつまでも辺りに漂っていた。



（煙草の煙は冷やしながら吸うのだと）


（教えてくれた人は）


（叱ってくれた人は）


　

　
　
リビーが『黒金乱眼』を置いている格納ガレージ。
薄暗いガレージの隅には古いマットレスと毛布、多少の荷物が無造作に転がっており、ここで寝起きしているようだ。
　
　
ガレージの中央に鎮座するのは『黒金乱眼』。
機体が置いてある部分はきちんと照明や整備機器、および簡易のテーブルと椅子があるが、それ以外はがらんとしていて薄暗い。
　
　
　
【ユニオン基本】
・格闘上げ＋ロールプレイ舞台。
　情景描写のお供にどうぞ。
　
・参加希望の場合はENo.316までメッセージをいただければ次回更新時に随時許可宣言予定。
　（メッセージ内の最後に【希望】と入れてくださると分かりやすくて助かります）
　未参加のまま、情景を利用したメッセージのみのやりとりも可。
　
【ユニオン活動】
・格闘
　
【ユニオン購入】
・機動力+3%