ENo.0328　"Canary"

nanicoの噂がいくつもの戦場から届く。
遠い友人の今を人づてに聞かされているよう。
ずいぶんと“ご活躍”のようだ。
近いうちに戦場で会うこともあるだろう。

――わたしの記憶のほうが幻だったらよかったのに。

nanicoは目の前で死んだ。
死者は生き返らない。

霧の中の残像は、今日も増えるばかり。

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nanimaruのハイドラは頑丈だった。
いつもわたしをかばってくれる。
戦い方はnanicoと同じ。
敵にその身を晒し攻撃を引きつける。

nanimaruが生きていれば、
きっとわたしは死なないだろう。
だからわたしはまたいつか、
僚機の死を見届ける。

わたしの死を見届けてくれるのは、誰だろう？

たとえば、帰り道を見失った山中の崖から。
あるいは、あたたかなベッドで不思議な夢を見ながら。
もしくは、道路を走るトラックの前から。

自身が望むと望まざるとにかかわらず、
残存領域に入り込んでしまった子供たち。

彼らのほとんどは身寄りもなく、
何の後ろ盾もないまま霧深い戦場を彷徨う。

彼らが還る場所はもう、霧の中にしかない。