ENo.0316　リビー・ニエロ

　
残像領域の夜は暗く、晴れることのない霧のせいで常に湿度が高い。
この霧は戦場を支配するだけでなく、どんな場所にでもいつの間にか忍び込む。リビーのガレージも例外ではなかった。

漂う霧を透かして暗いガレージの中央に鎮座するのは、黒に金銀を這わせた二脚の機体『黒金乱眼』だ。
整備を終えた機体は長い腕部をだらりと下げ、ぎりぎりまで絞った照明の中、静かな彫像のように鈍色の肌を艶めかせていた。
その機体の足元に、小柄な男が両足を投げ出して座り込んでいた。ガレージの床は特殊コンクリートの打ちっ放しだが、それに頓着する様子もなく、荒れた金髪頭をがくりと俯けて、眠っているのか、身じろぎひとつしない。

どれくらい経ったのか。
ふと、金髪の男——、リビーの体が傾いだ。黒金乱眼の脚部に凭れ掛かり、装甲板に、ごん、と頭をぶつけるようにして身を預ける。

「お前はどんどん変わっていくな……。でも、お前はいつだって戻れる」

今はウォーハイドラと呼ばれている機体に話しかけるように、掠れ混じりの低い呟きがこぼれた。

「俺はどんどん変わっていって、そして戻れもしなくて、それでいて、根っこのところでは一歩も進めていない」

なにかを悟ったような、どこか諦念じみた独り言に続いて、くっと喉の奥で嘲笑う響きが生まれた。
そのままくつくつと低く笑いながら、かたわらにあったパッケージから煙草を一本抜き取り、自嘲で歪んだ唇に咥える。ライターの炎が一瞬、白い闇とリビーの顔を照らし、消えた。じりじりと紙巻の燃える臭い。細くたなびく紫煙を霧に混じり込ませながら、煙草のパッケージを手にとり、目の前に掲げる。
羽ばたく鵄の絵柄と、『金鵄』の文字。
それらをじっと見つめる青い目に、睡魔の影はいまだ訪れない。

　

　
　
リビーが『黒金乱眼』を置いている格納ガレージ。
薄暗いガレージの隅には古いマットレスと毛布、多少の荷物が無造作に転がっており、ここで寝起きしているようだ。
　
　
ガレージの中央に鎮座するのは『黒金乱眼』。
機体が置いてある部分はきちんと照明や整備機器、および簡易のテーブルと椅子があるが、それ以外はがらんとしていて薄暗い。
　
　
　
【ユニオン基本】
・格闘上げ＋ロールプレイ舞台。
　情景描写のお供にどうぞ。
　
・参加希望の場合はENo.316までメッセージをいただければ次回更新時に随時許可宣言予定。
　（メッセージ内の最後に【希望】と入れてくださると分かりやすくて助かります）
　未参加のまま、情景を利用したメッセージのみのやりとりも可。
　
【ユニオン活動】
・格闘
　
【ユニオン購入】
・機動力+3%
・経験値+1