ENo.0206　モニカ・フランクリン

「……こんなもんかぁ」

　格納庫のコンテナは硬い。硬いけど、まあ、割と高さが座るのに丁度いい。ので普通に腰掛けてしまうし、まあ硬さなんて結構いつの間にか忘れてしまうもんだ。
　そんなことは別にどうでもよく、とにかくコンテナに腰掛けてちょっと色々新しくなったウォーハイドラと端末とをにらめっこしたりしてるのが今の私です。

「結構潰したと思ったんだけどなー」

　思ったより攻撃戦果が捗らなかったので。そこそこぶち抜けたような気はしてたんだけど相手が悪かったらしい。つまり、簡単に倒せる相手を、全力で殴ってしまったので労力と戦果が見合わなかったみたいな。そんな感じ。
　全然狙われずには済んだのでそこはよかったけど。これで狙われて整備費持ってかれてたら泣きっ面に蜂ってもんですし。
　思い切って二脚から逆関節に切り替えたアセンブルが悪かったわけじゃなくて、私の狙い方が悪かっただけ。だと今回は思いたい。どっちにしろ一回二回で結果が出るようなものでもないはずなので、気長に行かなきゃだ、とも思いつつ。

「……残像機、かぁ」

　この前聞いたことを思い出す。
　私に残像機のことを教えてくれたのは先輩のハイドラライダーさんで、男の人だけど女の子みたいな口調で話す人で、別にそれがなんだって問題もなく頼れる人で、お兄さんに会いたいのってその人は私に訊いたんだけど。

「生きてたら会いたいけどなぁ」

　端末を膝においてしまって頬杖をつく。

『――残像領域には、死んだ人間が姿を現すことがあるわ。その人の乗っていたウォーハイドラが、僚機として力を貸してくれることもある』

『敵として、立ちはだかることも』

　そう、あの人は言っていた。

　別に疑うでもないけどまあちゃんと自分でも知った方がいいだろうと思ってちょっと調べたけど、本当にその通りのことが書いてあったのでびっくりした。大したオカルトだっていうのが素直な感想。
　残像領域にいると、そういうことが結構ままあるらしいのだ。今まで私が出ていた戦場にも、もしかしたらその、残像僚機がいたかもしれないし、次にもいるかもしれないし。そういう話。

「……でも、お兄ちゃんの機体知らないしな」

　キリトさんはどうともなんにも言ってなかったし、お兄ちゃんの機体が残像として現れたことは多分ないんだろう。少なくとも遭遇したことはない。
　どういう機体が残像として現れるのだろう。私が調べた時はそういうことは書いてなかった。ただ、死んだ機体が現れることがあるって結構素っ気なく。詳しく調べても、むしろ調べれば調べるほどオカルトに足を突っ込んでいって信憑性が薄れていく感じ。

　――お兄ちゃん、本人が帰ってきてくれるんなら、それはそれだけど。
　残像になって現れるのは、どちらかというと、本人ってより機体なんじゃないかって思うし。お兄ちゃんの意思がそこにあるとはあんまり思えないし。あるんなら、お兄ちゃんなら、あんまり戦い続けるとも思えないし。分かんないけど。
　お兄ちゃん本人なら。あの大きくて我儘言っても笑ってくれて、優しくて、頭を撫でてくれる、私を守ってくれるお兄ちゃん本人なら、
　あの暖かい手が帰ってくるなら、