ENo.0206　モニカ・フランクリン

　――やめて！　やだ！　放しっ――嫌！

　――うるせえ！　無駄に育ちやがって、役にも立たねえくせに！　せめて大人しく使われろ！

　――嫌に決まってんでしょ！　この――やだ、やめ、この――！！



　――あんたなんか、



「……はっ」

　そろそろっていうかもうとっくに見慣れたはずの天井だった。
　でもそれがなんか信じられなくて、思わず周囲を見回す。暗い。まだまだ夜だ。端末を確認しても、やっぱり深夜。液晶の光が眩しい。

「うー……」

　手に持った一応精密機械をぽいって投げ捨てる。大丈夫捨てた先はベッドだから。ぽすんって軽い音しかしない、この前のタブレット踏んだ時みたいな激ヤバな音じゃない。
　嫌な気分だった。だって嫌な夢だ。
　なんで、あいつの夢なんか。

　別に嫌なことがあったわけでもない。残像領域に来て、結構、そこそこ経った。色んな人に会った。お話もした。助けてもらったり、心配してもらったりもした。友達――も、できた。約束とかもした。
　今の私は、もうすっかり解放されている。自分の力で生きている。生きられている。やりたいこともできている。きっと満たされている。
　足りないのは、一つだけだ。

　お兄ちゃんがいないだけだ。