ENo.0505　セイラン＝ルーデ

――終わった。

操縦棺に身体を預け、大きく息を吐いて脱力する。
途端にどっと押し寄せる疲労。
補助モニターに表示される周囲の状況は、凄惨なものだ。
実に半数以上が撃墜され、残った味方も五体満足な者は少ない。
それでも、こうして生きている。

生き残った中に、今にも墜ちそうなほどに傷付いた機体がある。
この世界に来てからずっと組んでいる、私の僚機。
それが無事だと分かると、何とも言えない安堵が押し寄せた。
慣れない手つきで、通信機器を操作する。回線を繋ぐと、一方的に呼びかける。

「無事で良かった」

それだけを言うと、回線を閉じ、目を閉じて休息の姿勢に入った。
今回は疲れた、少し休むくらいは許されるだろう。

******

この世界で二人しかいない、わたしの知り合い。
声も顔も知らないけれど、それでもどこかにいることは知っている。
この世界で、気が付いたらそこにいた。
どこか手を伸ばすようにユニオンを立ち上げて、すぐに申請があった。
利益や道理ではなく、魂で惹かれあうような感覚。理屈では通らない、不可思議なそれ。
書類の上でしか知らない筈の、それでも何故か知っている気がする、わたしのなかま。
何も覚えていないわたしの、きっとそこにあった微かな繋がりは――

「今回は相当きつかったらしいな。苦戦したブロックも多かったとか」
「聞いたか？14ブロックは全滅だとよ」

『ENo.504：イル・ザ・クラーケン　【死亡】
　登録は抹消されます』

――呆気なく消えた。

*****

繋がりがひとつ途絶えると、途端にこれまで『持っている』と信じていたものが危うくなる。
それはきっと、この世界に来る前の何かであり、今はもう無くなってしまった何かなのだ。
そのまやかしが晴れた今、そこに残るのは、ひとりのハイドラライダーだけだった。

残像領域のどこかの町にある、行き場のない者の寄り合い所。
利用・改築自由の集合住宅。運営は気まぐれ。

***

ユニオン活動：現在は反応*5
ユニオン購入：経験値+1、またはAP+10%