ENo.0044　ロウシャ・ゼイルストゥラ

　

　彼はブリッジから機体を見つめていた。特に何を言うわけでもなく、ただどこか呆けたような様子で、見慣れた姿を眺めていた。

　もうハイドラには乗らない方がいい――何度言われたことか。彼は自分の勝手だと言い続け、助言を無視し続けてきた。これからもそうだと思っていた……が、今の彼はどうにも様子が違うようだった。

　自分の体が機動力重視の機体から受ける負荷に耐え続けられるわけがないことは十分にわかっている。元より自由の利かない体が、立ち上がることさえ許されなくなる可能性だってある。下手をすれば、ただでさえ終わりの見えている命さえ――

　しかしそれ以上に、それらがどうでもよくなるくらいに、彼は今ある“自由”を手放すことを恐れた。
　望めば望むだけの自由をくれる。かつて自由であったころの、ただの狩人であった頃の自分の身体を取り戻す、ある種の走馬燈のような夢を見せてくれる。いつしか彼はこの機体から離れることができなくなっていた。

　「ネヴァン」

　およそ話かけるには小さな声で、ようやく口を開く。

　「…………言い訳は、終わってからにする」

　今までと異なるアセンブル。書いたこともなかった戦術、計画。彼の手に握られたメモ書きには、『コネクト』の文字があった。

何らかの理由によりハイドラに縛りつけられたライダーが集まる。掃き溜めとも言う。
　
一部メンバーの素行不良により世間からの評判は芳しくない。

音楽専念。