ENo.0526　CSMC-65 SWARM of HORNET

ミサイルは何故強いのだろうか？

……誰が撃っても強いからだ。
敵を捉え、撃つ。
引き金を引く人間にはなんの技術介入もなく、後は全てミサイルとその周辺装置のみで敵を撃破する。

戦場にミサイルを持ち込んで引き金さえ引ければいい。万物がミサイルキャリアーと化す戦場では、一騎当千の『英雄』が存在する余地はなく、技術も求められない兵士達は「誰でもいい」存在となっていく。

「俺」もその一人のはずだった。
この機体のテストパイロットは、その「誰でもいい」存在の代理であるはずだった。

「俺」は幾多の戦場で試験と称し戦闘を行った。
戦闘AIが学習データを累積するのと同時に、「俺」もまた戦場を目の当たりにし続けた。

結果として、「俺」は霧の世界でも有数の射撃の名手となっていた。

弾頭が自ら追尾するまでもなく、「俺」の放つ弾丸は敵機を捉える。
高価な弾頭を改良するまでもなく、単に威力の高い弾薬を「俺」が撃つだけで容易に戦果が向上する。

最早「誰でもいい誰か」はそこにはいない。
戦争を未来に推し進めるはずの機体は、「英雄」が存在する遥か過去の戦争を体現する機体となりつつあった。


……この機体は、そして「俺」は、最早ミサイルを必要としていなかった。
誰が撃っても強い、というメリットが、何の意味も成していないからだ。

今日も「俺」の機体が空を駆ける。
全てを滅ぼす火砲の為に備え付けられたエンジンから、わずかばかりのおこぼれを駆動系に回し、高出力ブースターで強引に空を飛ぶ。


意思を持ったように敵を追う誘導弾を蜂に見立て、それを運ぶためだけの存在であるこの機体は「HONEYCOMB」と名付けられた。
「誰でもいい」存在の為に作られた、戦場から人を遠ざけるための機体。

「俺」が「俺」になる過程で、そんな名前などとうに形骸と化していた。


「敵機発見。今日も戦果を稼がせて貰う」


モニター越しに敵を捉える「俺」は―――

きっと、英雄（ひとごろし）の目をしているのだろう。

とりあえずミサイルを撃ちたい

空対空ミサイルとかSAMとか迎撃ミサイルとかコンテナミサイルとか納豆ミサイルとか皆好きでしょう？

そうでもない？そう…