ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

「おーおー、怒ってる怒ってる」

企業連盟会長からの直々のラブコールを見た俺は、たいそう愉快な気持ちになった。
これが見れただけでも十分にリスクを負っただけの価値はあったと言えるだろう。

「愉快なのは私も同感だけど、大丈夫なの？　支援カットされちゃってさ」

メッセージを後ろで読んでいたらしく、フィーグルがそんなことを口にする。

「死人は増えるだろうなあ、そりゃ。撤退支援もなければ安全確保もナシだ。まあ、いつもの事さ」

「ヤな戦場ばっかり渡って来たのね、アンタ……」

呆れ半分同情半分といった顔でこちらを見ているフィーグルに俺は肩を竦める。

「そうだな。そしてこの後はどっちに行くかは分からねえが、クソな職場に終身雇用されるってワケだ」

「あっちの職場はこっちと違ってリーダーが適当じゃないから、色々と束縛されるわよ。
　ウチはこうして暇な時にはアンタの様子を見に来るくらいの余裕はあるけどね」

「口うるさい上司もセットでついてくるみたいだけどな」

「偏屈でひねくれた上司もいるからそこは安心していいわよ」

軽口に、フィーグルはにやりと笑って返す。
フィーグルもまた人間ではないようだが。あの女と違って得体の知れない恐怖感はない。
俺にもし選択肢があるのならこちらを選びたいものだが。何となく、それを口に出す事は躊躇われた。
あの女の気配が、常にまとわりついているように感じられるからかもしれない。

「…しかし、慈善事業ねえ。どうなのかしら。
　向こうも戦力は保持してたみたいだし、あながち負け惜しみでもないのかしら」

「ありゃあ強がりでも負け惜しみでもねえよ。命乞いだ。
　自分は強いから敵対しない方がいいぞ。頼むから元の鞘に納まってくれよと泣きついてるのさ。
　トップがバカじゃなけりゃあな」

「へえ。なんでそう思うのよ」

「本気で殺したきゃ切り札は黙って出すに決まってんだろ。
　それをわざわざ恨み言とセットで教えてくれるって事は、力を見せつけてビビってくれる事を期待してるのさ。
　どこかに拾われて本格的に敵に回る前にな」

「…ああ。いざ取り合いになっちゃえば、好待遇勝負になるもんね。
　それだとハイドラライダーの思う壺だし、いずれまた自分達の値を吊り上げるために裏切りかねない。
　それなら今回、クギを刺す事で裏切りは割に合わないと理解させる――って事か」

よくある話だ。
俺もそうだが、傭兵は基本的にがめつい。
得られるものは必要以上に得ようとするし、得るためならばどんな事でもする。その結果、雇用主がどうなろうがお構いなしだ。
傭兵は金が支払わなくなればさっさと鞍替えするなり強盗になるなりすれば良いのだから、別に雇用主が倒れようと大損はしない。
だからこそ雇用主は金や待遇以外の手段で傭兵を制御しなければならない。
飴だけではつけあがる。鞭も駆使しなければ傭兵は制御はできないのだ。

「でも、ホントに殺す気満々のただのバカだったらどうするのよ」

「…ハイドラ大隊はこの領域の最大戦力だ。
　また迎え入れる気があるのならともかく、無いのなら目の前に迫る脅威に対して取る行動は一つしかないだろ？」

メッセージを削除する。
破棄され、ダストボックスへと送られるそれは、企業連盟の行方を暗示しているようでもあった。

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

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格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。