ENo.0277　カラーガタ

ナヴァラサ。
スレイプニルのような六本脚。それを、六本脚でなくしてもかまわないかと尋ねると、拗ねている様子を見せながらやや躊躇して
「ナヴラスだ」
と名乗った。
それから初めてハイドラは元の主人について、話しだした。
息の仕方、歩き方、食事の取り方、それらを教えてくれたあの残像だ。
カラ、時間に選ばれた彼は、ウィリアムズといって、小さな赤子が居たそうだ。
世事に長けた陽気な男だったが、配偶者が一人赤子を育てる毎日に、手も足も出なかった中、私の『養育』を引き受けてくれたということだったらしい。
映画を見ながら少しばかりドラッグをやって、ドラッグをやる人には良くあることだが全く下戸で、古い古いアーカイブを眺めては戦争を引き受ける。
ウィリアムズの配偶者は『スピリチュアリズムにハマってわかわかんねェ』状態だったらしい。
それがどういうことだったのか私にはわからない。
ナヴァラサが何故今になって主人との思い出を語ろうとしたのか、それもわからない。

マーケットで見かけたガブリエラストークスを載せると、「どうして誰も彼も戦場に帰りたがるのだろうな」とナヴァラサは漏らした。
「全くだ」
そう言った私の心中にも、戦場という家に帰るための鍵はしっかりと握り締められていた。

社会生活を、営むに支障のある……デンパが言語に混じる……