ENo.0277　カラーガタ

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首級をあげる。
それは確かに成果だった。
大きく見れば横のものを縦にしただけのもの。生きているか死んでいるかはそんなものだと思っていた。
事実、そんなものだ。

なのに、賞賛を受け、自分自身が考え、選び、成したと感じると今までに無かった気持ちが湧いた。

うれしい。

殺せたことがうれしい。

変質していく自分に気づき、心細くなる。

心細くなったり、うれしくなったりする。

恐怖だった。

こんなものに振り回されてライダー達が生きていることが信じられなかった。

本当に、霊量は一定なのだろうか。このひとの心という流れが厚くなったり薄くなったりすることはないのだろうか。

霧が帯びている霊性は誰かだったのだろうか。

私は誰かになってしまった。それにただ戦慄して。

ナヴァラサに促されるまでコフィンを出ることが出来なかった。体を預けるその場所が霧ではなく濡れているのが何故だか理解するのに時間こそかかったが、体を保つ食事も、皮膚を洗い流して僅かずつ自分自身を入れ替えることも出来た。
剥がれ落ちる皮膚、抜ける髪に僅かに乗った霊性が我を離れて私でなくなる。

そう、こうして変わっていくのだ。

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次の戦場も。何故だかほとんどあてに出来そうな機体が居なかった。
前回よりも悪いかもしれない。

けれどここなら、よりたくさん殺せる。
そんな考えがちらついた。

そうなったのはハイドラから消えた威嚇の笑いを引き取ったせいなのか。
それともハイドラライダー達を見つめすぎたせいなのか。

淡々と皆を見つめたアーガタは羽化を経て本当にハイドラライダーに成ったのだろう。一面ではそれは目指していたことではある。

見届けて帰るだけのことをするのに、こんな残忍さは必要だっただろうか？
これが己の嗜好だとするならば、顕在化する前に帰ってしまえば良かったのに。

不安と悲しみとこれから訪れる殺戮の時間への期待と喜びがいつもただ静かだった内面に満ちた。

時間と一体だった青年は、死を確定され生まれ落ちることに恐怖して蹲るだけの少女に変ってしまった。

弱く弱く、ただ弱い。

恐れを知って見つめるモノから殺すものに変質した。

それは生の本質。
死ぬという必定が生であり、死ぬことの原因は生まれたことに他ならない。

死なないために殺す。

無自覚に喰らう塞がれた目は開き、その目が捉えたモノを殺して食べる。
それは生物としての個の確立であり。

アートマンの細胞としての霊格の確立だ。

死出の径は、大丈夫、誰もが往くのだ。

誰や先我や先と旋律は歌うだろう。