ENo.0378　フレイド・コークス

　予想通り、ラキア・パラミダスは少女ソラの名を持ち出すと私（レンド社）の提案に飛びついてきた。
本当に扱い易いものだ。

　思えば、彼女と出会った当初の頃はそうでもなかった。
彼女は刺刺しく接してきたし、幾ら私が誠実な言葉と殊勝な態度を並べて見せても、それを撥ねつけたものだ。
まあ、それにはもっともな理由が有った訳だが…。

そんな彼女に私は随分と手を焼かされたものだ。
出会う前は貴族のお嬢様だからと甘く見て、軽く制御できるだろうと思っていたのだが。

　次第に私の彼女に対する認識は改まった。
いや、改められたと言うべきか。
彼女のハイドラ乗りとしての腕前を認め、刺刺しいながら正しい状況把握と物事の分析をする彼女を見続け、私が思っていた扱い易い手札…レンド社に記憶を取り戻させる為の道具は、僚機へと変わった。

　それなのに、その手強かった彼女が、今はこうも扱い易くなったのは何故だろうか？
ソラという少女がアキレス腱となったのだろうか。
…それも一要因だが、私が彼女の性格を把握したのも大きいだろう。
きっと、ソラと言う少女の名を出さずとも、私は彼女をレンド社に向かわせることは出来た筈だ。
寧ろ、彼女は私が誠実に頼めば、余計な工作をせずともレンド社に来てくれたのだろうとさえ思う。

　………。
頭が酷く痛む。
何かが、何かが違うのだと、頭ではなく心が叫んでいた。

サイボーグ医学・ロボット工学の分野で名を売る中堅企業。
高い技術力を有した製品は評判高いが、軍事兵器市場への参入には消極的。
「ありふれた製品を、高品質で。」をモットーに掲げている。