ENo.0685　かもめの亡霊 モーヴェ

なんか、今日の戦場は疲れたな？
肉体的に、じゃないのは当然なんだけどな。なんだか長いこと戦ってたような。

ダブルピースかましてる青年の顔と、
…あれはなんだったんだ、残像領域にエビ？
とにかく通信に何度あれらが出てきたことか、もう数えることもできねえくらいだった。
次元の狭間を行ったり来たりしてるからおかしくなっちまうのか、
それとも皆こう思ってんのか？


後ひとつ、不思議なことを挙げておこう。

あの竜のようなハイドラが、落ちたと思ったら。
最後の力を振り絞る、
ううん、振り絞るって言い方は似合わねえのかな。最後のさいごに全てを出し切ったように見えた。

…あのハイドラライダーは今どうしているんだろう。


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（別の日のページだ）（機械油が散っている）

また、『カロン丸』を利用した簡易パーツが他人の手に渡る。
悲しかったり、寂しかったりすることは無くて。
むしろ嬉しかった。

もしもオレが消えたり、ニーユが作った操縦棺が潰えても、
まだ、『カロン丸』がそこにあったという証拠を誰かが何らかの形で持ってくれるんなら。
これほど嬉しいことはない。

「だれかに覚えていて欲しい。」
それがあいつの、残像領域に来て最初の願いだった。


オレも、使えるものは使わねえと。ジャンクを使って、潰して、また作る。
これが結構楽しいんだよな…



もちろん絶対に潰したくないヤツもあるけどな。
…というか、アレはもう使い物にならないくらいに歪んじまった。

かつての僚機にも言ったんだ。早く開けなきゃ。
そうすれば装甲の一枚くらい、羽の一枚くらいは使えるかもしれない。

早く開けなきゃ。棺の中は今頃凍ってる。
メーヴェはどうしているだろう。


メーヴェはどうなって（ぐしゃぐしゃの線）

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ギルデンロウがいるあの戦場、今週か。

ジャンク船に普段は付けないパーツをいろいろ付けて頑張ったつもりだし…
行ける。うん。オレならやれる。メーヴェとは違うんだ、オレは。


外に出ると、雪が地面に、がらくたに、見境なく降り積もってた。
こんなに降ってるのを見るのはオレも初めてだったけど、寒くもなんともないから…
（こんなビリビリ腹丸出し水兵服にも関わらず）

よくわかんねーけど真っ白で眩しいな、という感想を持った。


『ジャンク船』は雪が降っているのも気に留めず、霧と雪の中に浮かんでいる。
何故か「いつか雪原を見てみたいな」と言っていた声を思い出す。

今はそれを気にしてる場合じゃないけどな。
操縦棺に乗り込めば、『ジャンク船』は静かに次元の向こうへ沈んでいく。

もうすぐ出航の時間だ。


よし。戦場につくまでに書ききれてよかった。
どんくらい長く続くか分かったもんじゃねーし。

ユニオン名：ジャンク・パックス
　（勇ましい口ぶりの、低く加工された声がラジオや通信機から響いている）
　（どうやら、プロパガンダ……のようなユニオン参加の呼びかけだ）

　《集え同胞！　ジャンクの大地に産まれ、スクラップを食む獣たちよ！》
　《今こそ『群れ（パック）』を為し、敵を食い荒らす時だ！》


概要：
　いわゆる傭兵たちの為のユニオンです。
　目的の一つは「他のハイドラをぶっ壊してスクラップにして、スクラップを売り払ってお金持ちになろう！」
　そしてもう一つは「ジャンクみたいな機体で気取った金持ちたちを叩きのめしてのし上がろう！」です。
　雰囲気としては共産主義みたいな感じです。でもやってることはバリバリ資本主義。

　設立者がジャンク屋なのもあって、ジャンク品や廉価なパーツ、泥、ツギハギ、硝煙、戦場……
　その他モロモロに縁深い人にオススメです。もちろん縁がない人もオールオッケー。