ENo.0209　赤目

人間何かしら取り柄というのはあるものだが…
それを継続不能にする因子もまた、己の内にあるのだと知った。残酷なことだ。

私は「殺し屋ギルド」の百目、だった者。
私の銃にかかれば、貫けぬものなどなかった。飛ぶ鳥の、血を吸う蚤の心臓だって撃ち抜けた。だが最早それも過去の栄光。

私の体はアレルギーを起こしてしまった。この世界に、ぬいぐるみの綿のようにぎっちりと詰め込まれている霧に。

「イッッ」

「クシッ！　　　　　…ズビッ」

「ハァ～～～～～～～～～～～ありえん…。くしゃみと目の痒みで仕事失敗しまくってさぁ、ギルドクビになるし、」

「まさか出世払いの１０年ローンで手に入れた１６段階出力調整機能付きハンディ・バスター砲ちゃんを初日で質に入れることになるなんて…。」

「それもこれも白兎生体化学がマシな薬を民間に流してないからよ！私の症状がレアケースだとか言ってさあ！大して効きもしないアンプルをバカ高い値段で出して来たりして！足下ガン見じゃないの」

「ぶっちゃけ自分の腕一本で食ってきた元殺し屋ギルド員としてはさぁ…ウォーハイドラみたいなマシンって理念に反するっていうか…つーか霧で動いてるのが気に食わねーし、そこんとこ複雑」

「ハァ～、とにかく目標は一つ。漂流物の医療コンテナをサルベージして、この症状の特効薬を見つけ出す。そして輝かしい殺し屋の日々に戻る！」