ENo.0147　フェティヤ・クェリフィート

***
まだ赤ん坊の少年を抱えて翼を広げる母の姿は、いつも凛々しかった。

その隣を飛ぶ父の横顔は、いつも優しかった。


少年はああなりたいと思っている。今も。
けれど、


……少年は、ずっと飛べないままだ。

***


ヘンな夢を見た。
いつもはあんまり夢なんて覚えてなかったのに、ここにきてから夢はずっと覚えてる。
そのひとつ。

おれよりずっとずっと背の高い奴が、おれのシャショウボウを被っておれの席に乗ってるんだ。
なにか慌ててるみたいだった。

それでおれは、荷物だらけにしてた席に座ってる。
真っ暗くて、周りを見ればユウレイみたいなやつがたくさん。
座ってでかい変な紙を見てるやつもいれば、ちびっこくて四角いキカイを操ってるやつもいた。
……すこし怖かった。

そん中で、ひとりだけ子供がいた。
そいつだけ窓の外を見てて、笑顔だった。
何も知らない、純粋な笑顔。


おれがそいつに話しかけようとしたら、大きな音が鳴って、大きく揺れて……

そこでおわり。
ヘンな夢だった。

まあ今日から本格的なハイドラライダーだ！
最初じゃ撃墜されちゃったけど。結局ちょっと危なかっただけだし、ダイジョーブ！
モーヴェともいっしょだ。あのフネ、すごいな……

これから頑張ることがたくさんだし、夢は夢だ。
おれはそこまで気にしない！


明日も頑張ろう。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが一機。
ある一人の幽霊が、そこで暮らしているのだ。


「メシと寝床？必要なら出すけどオレあんま料理上手くねえよ」