ENo.0137　文庫りぶら

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＃３
真夏の夜、学校の中で【彼】は走り続ける。いや、やむを得ず走らされていた。

背後からずっと聞こえる叫び声。
ナァイゾオオオオオオオオウウウウ！！！　イズウウウウウウウ！！

「なんで！模型のがい骨が、元気に、走るんだ、よぉ～～～！」
「は、こういうのは、ホラー物だけにし、てくれよ！」
これが実際に追われていなければ笑えるようなことではあったが。被害者は真剣で余裕などなかった。

元から文化部系で走力は人並みではあったが、女学生の姿になった【彼】にとって骸骨は執拗過ぎるハンターだった。
ホラー映画のように集団で襲ってこないことが唯一の救いではあったが。

一刻も早く、矢を撃たないやさしめ（当人にとっては地獄）スケルトンを巻くために中央階段を駆け下りる。
階段の角を曲がり急いで、教室の中に立て篭もる。息を殺して追手にばれないように身を隠す。
（適当に廊下の反対方向に掲示物を投げ捨てたけど、ドアの開閉音をごまかせたのだろうか）

モツー！ハラミー！ホルホルモーン！
怪物（？）の叫んでいる内容が冷静に耳で聴こえるようになって、笑いの声を必死で抑える。

「ん？過ぎたよな…」
運良く、周囲には置き方の悪いモップ等はなく一時期の安息を得られた。
肩で荒く呼吸しているのを落ち着かせて、今後の探索こと怪談解明のために思考力を再生させる。

（あれは、生物室の『内臓ないぞうさん』だったかな？ナイゾウと連呼していたのだから）
まだ近隣で探している可能性は高く、走って汗だくの体を冷やさなくては

（……そういや、女子の体だったな、胸周りが特に布引っ付いて気分わる…）
自分の体を直視しないよう、必死に目をつぶって脱いだ服を乾かしたのは別の話。
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#８
階段を降りきった地下2階は、ほんのわずかの通路の先に変電室があり鍵がかけられていたはずだ。

それがどうした、扉は無用心に開けられ中は靄が立ち込めている。

「これは最悪にホラー万歳、犠牲者いらっしゃいってムード１０００％だよなぁ。」

先刻、図書館の怪談に霊視能力を幾らか賃貸されていたために冷静になることができた。
しんだー、がんばるぞーなどといった声のようなものが聞こえるが。

その姿が見えないため現実逃避する余裕があったのだ。後々、それを散々見ることになる。

「確かそれっぽい七不思議は『神隠しのヒミツ地下室』だったか……。」
どういう理屈や基準で神隠しが行われるか知るには、その空間で調査するか文献を漁るかしかない。

　　　　かのじょ
この時の■■■■には、図書室を忌避して実地調査へと足を進めた。

最初の一歩を踏み出すのには勇気が必要だった。
勇気も身じろぎも関係なく、慣れていない体にバランスを崩してべったりとこけてしまって決心する暇などなかった。

もうどうにでもなれと諦めて、機械の擦れる音や火薬の爆ぜる音にビビりつつも足を進めた。
こけてから７歩歩いた時点で、入り口の扉が跡形もなく消えていたのだし。

こうして『文庫りぶら』は、未知の世界である残像領域へと神隠しに逢うのであった。

「ウイルスというやつがとても厄介だなぁ…」
コロッセオ出場者に与えられる待機ガレージの中で【彼女】はぼやく。

「機体に攻撃が当たらなくても、索敵スキャンがおかしくなるんだよなぁ…
　味方チームに何回殴ってお怒りのボイスがきたことやら」

観客にとっては大番狂わせとなって、大層白熱しただろうし、激熱な有力候補が
（キャッシュバックされる）危ない線まで落ちて行った。
胴元のコロッセオレギュレータ社にとっては、利益が得やすくなっただろう。


「前回のとは違って、がしがし殴っていけたのは楽しかったんだよなぁ。ただ、ただなぁ…」
回転椅子をごろごろとメリーゴーランドさせながら、咥えた鉛筆を上下させる。
（別のところも上下しただろうが）

「コロッセオマニアのあの子が言うには、索敵なければ死するのみ、なんだよなぁ」

「今回は索敵役をやって、支援と防御の評価ポイントを稼ぐという方針でいこうかな？どうだろ？」