ENo.0291　I-Doll

スポンサーであるシルウェストリス航空の最新鋭部隊壊滅の知らせ。
それを確かな情報だと裏付ける差出人不明のメッセージ。
不穏な霧立ち込める残像領域に戻ってきた事を――戻ってしまった事を――Iは噛み締めていた。

「ハン！たかが一企業のパイロットを殺す事で世界は救えるみたいだよ！」

Iの傍らに立っていた老婆が鼻でせせら笑う。
彼女は通称『GJ』こと全天候型移動式工房『Glorious Junk』のオーナーであり、現役バリバリのメカニックである。

「……貴方が狙われたら困るわ、イザドラ」

「ボスとお呼び！全く……ここはアタシの城だよ？こんなどこの誰かも分からない奴に侵入されてたまるかい！」

ボスことイザドラ。
瀕死状態だったIを発見し、鋼鉄の身体を与えてくれた恩人であった。
むくれたイザドラに思わずフフッと笑ってしまい、イザドラは目を眇めた。

「なーに笑ってんだい！もし、アタシが狙われたらアンタが守る事になるんだからね！」

「ええ。そうね……だから、絶対に死なせないわ」

Iとイザドラの視線が交わる。
イザドラはニヤァと笑い、だが、ハッと何かに気付いたように口を開けたかと思えば、むくれた顔に戻ってしまった。

「当たり前さね！誰がこんなところでくたばるかってんだ！」

どすどすと大股で部屋を出て行ってしまった。
Iは慌てる事なく、むしろ微笑ましいものでも見るかのように、イザドラが出ていった扉を見つめていた。

全天候型移動式工房『Glorious Junk』――通称『GJ』
その名の通り、どんな悪路をも物ともせずに進んでいく移動式巨大工房である。
要塞じみた外見。重量級ウォーハイドラ『I-Doll』を収納しても余裕のある格納庫。
個室も十分にあるため、住居に困るハイドラライダーは相談してみてはいかがだろう。
家賃はそれなりに取る方だが、機体が大破してもすぐに修復に取り掛かれる環境。
個室全てにシャワーが付いている他にも、ボスご自慢の大浴場がある。
食堂にはこれまたボスが引き抜いたシェフ達が居り、十分満足感が得られるだろう。

*射撃特化ユニオンです
*ユニオン購入は現在素材＋1となっています