ENo.0201　水槽の脳髄

「エンサイクロペディア・フラグメントの解析許可が下りました。積みましょう、レーダー5本！　……再来週くらいから」
《再来週なのかよ！　ていうかえっ何いきなり、何そのエンサイハラマスコイおどりっての》
「最初の4文字しか合ってないです」
《おう》
「…………。えーとですね。
　以前から遺跡内で、レーダーの探知網に微弱ノイズが混じる現象が確認されていました。ノウさんは実際にレーダーを動かしていたので、なんとなくわかるかと思うんですが」
《えっそうだったの？　訓練と実戦は違うぞーってめっちゃ言い聞かされてたからあんなモンなんじゃないかと思ってた》
「…………。まあ僕らの教育をきちんと聞いていてくれて何よりです。
　それで、そのノイズについて。
　古代の妨害機構が生きているのではとか、デバステイター・センチネルの探知網と干渉しているのではとか、いろいろと説が分かれていたのですが……
　この度、その中にハイドラの性能を引き出すデータが眠っていることが判明しまして。
　大量のレーダーによってノイズを広域探知しリアルタイム解析を行うことで、コネクトシステムの要領で同小隊の友軍を強化することが可能なのではないか、との仮説が一挙に有力になりました」
《で、もうすぐそれをやるの？》
「はい。そうなったら、レーダーも買い足しましょう。白兎本社からの支給品を使ってもいいですし……
　デバステイター・センチネルの継続的出現も予測されていますしね。まだ不明なことの多い分野ではありますが、現在確認されたものは非常に強力ですから、まず不利には働かないでしょう」
《アンセトルドも積みっぱにするの？》
「ええ。友軍機からの産出分も含めて、バイオ兵器は相変わらず戦力の一翼を担うと予想されています」
《オッケー、まあレーダー動かすなら前とそう変わんないだろうしな。
　……それにしてもさあ、なんか思ってたのと違うんだけど》
「といいますと？」
《俺さあ、シミュレーションとか学習をやってる間はバシバシ敵機撃墜！　ってのに憧れてたのね。
　さて問題です、今まで俺が取ったキルマークは？》
「片手の指で足りることは覚えてますよ」
《DA・YO・NA――――
　で、俺が出したバイオ兵器が取ったキルマークは？》
「群れてしまえばどこのバイオ兵器とかありませんからね……そこまでは数えてないです。
　でも基本、攻撃能力に関しては今現在たいていのライダーを超えますよね」
《DE・SU・YO・NE――――
　俺さあ、この関係、逆だと思ってたのよ？》
「ノウさんはまだ人生……脳生？　短いから知らないかもしれませんが……なかなか目論見通りにうまくいくものじゃないですよ」
《なんかすげえ体よくごまかされた気がする！！》

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。