ENo.0201　水槽の脳髄

《おお何ソレ、今時手書きとか珍しくね？　ラブレター？》
「簡易報告書は手書き書面が認められているんですよ。もちろん本部のほうで物理コピー、電子データバックアップは取りますけど」
《アレだろ、添付ファイルで画像送信したらスキャンしてファックスで送ってくれって言われるやつだろ》
「なんだか偏った知識を学習してますね、そんな古典時代のデータを与えた覚えはないですよ」
《レーダーのノイズに時々意味の通るやつが混じってるんだよな。140字上限くらいでたまに画像とか動画ついてるやつ。一番多いのは「にゃーん」だけ》
「整備班にレーダーの再点検を頼んできます。だいぶチューニングが甘いかもしれません」
《なーに本気にしてんの、冗談だよ冗談。そんなの拾えるわけねえじゃん。……で、そのもう一枚ある方は？》
「白兎生体化学本社への上納金の納入書です。ノウさんのことももっと強く調整してくれると思いますよ。今度こそ『がんばるぞー』って声が聞こえるようになるかもしれません」
《強くなるんなら考えるがマジで聞こえるのかね？
　しかし子会社ってのはいろいろ小回りが利くんだな。……子会社でよかったっけ？》
「えーっと、子会社の子会社の子会社で」
《玄孫じゃん》
「そんな立場だから、私も本社社員の方とはお会いしたことがないんですよ。あの広報の方が初めてかな」
《遠縁すぎねえ？》

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。