ENo.0180　マーテル･ライソン

私がメンテナンスルームから現れると、コロッセオチームの面々は平静を装っているが喜びを全く隠し切れていない表情をしていた。
私がランカーハイドラ『レヴィアタン』撃墜したのがそんなにも嬉しいかと、呆れた。
しかし、彼らの喜びは私の思う事を遙かに超えた事象が起こった故の物だったと、すぐに聞かされた。


レヴィアタンのパイロット、鉄檻の『メシア』が死んだ･･･


その短い言葉は私を戦慄させるには充分すぎる破壊力を持った、事実･･･だった。
「馬鹿な！」
思わず荒げた声が出た。
ランカーの実力と機体の性能はコロッセオで仕事する上でよく情報資料に目を通し、目の前で見せつけられた実物の迫力。
それらを理解した私の頭脳が反射的に出来の悪い冗談だと、囁いた。

彼女とは交流こそなかった、だが同じコロッセオという舞台で殺し合いという曲芸を演じている仲だ。
一方的ではあったが信頼のようなものが私にはあった。
この相手ならば厳しいアプローチでも、なんとかするだろう。
思い返せばなんとも形のない意識だったかもしれない。

だが、後になって届けられた判定通知、試合の録画、与えられた賞金、エースが不在の試合会見。
それらが私の信頼が如何にいい加減なものだった事を物語っていた。

誰が、殺した？
やったのはシバリーだ。
しかし･･･トドメを刺せと指示したのは私だ。
そもそも、大事な局面での引き金は私自身が引く。
私が殺したのか･･･？
でも、その火力を制御するのはシバリーだ。
シバリーが殺るべきと判断したのか･･･？
何故･･･？


葛藤する内に気がつくと格納庫に来ていた。
エンジンのかかっていないシバリーは静かに佇んでいた。
「何故、火力を絞らなかった」

･････････。

「目的も仲間もあったあいつは、漫然と生きてる私よりよっぽど･･･生きてる価値があったんだよ」

････････････。

白兎研からの脱走組の研究者のラボ兼飛行要塞。
パイロットの技能を必要としないハイドラ、シバリーシリーズの開発を行っている。