ENo.0085　萌え声

私が寄宿舎に帰還してから、皿の上に転がっていた最後のウィンナーにフォークに刺し終えるまでに、
「良いことあったようだな」と声をかけられたのが2回、「散々だったようだな」と声をかけられたのが3回である。
私の感情は嬉しさ33％、不満は66％といったところのようだ。雑な分析にもほどがあるが。

33％の嬉しさは、コロッセオランカーの『救世主』が死んだこと。
実際に死んだかは不明だが、少なくてもランキングから消え去ったのは事実。
そしてこの事実だけ十分だった。

理想を言えば『救世主』よりも『下村』のほうに消えてもらいたかったが、
時間稼ぎしかできなかった私にそれを望む資格はないだろう。

66％の不満は、私の戦果が振るわなかったこと。
初動が遅れたのが原因だ。
一般的な戦場でもそうだが、特にコロッセオ下に置いては、相手よりも先に数を減らせなければ物量さに押しつぶされることになる。
そんな状況下で『救世主』を落としてくれたパイロットに感謝をしよう。

感情の残りの1％は……ロケットが消えたこと、それに対して月が操縦桿であると言った白兎の言葉。
白兎はただの逝っちまってるやつらだと思っていたが、そうとも言い切れないと感じる部分も出てきた。

ここの判断はボスに任せるとしよう、私には判断しきれない状況になってきている。

民間軍事会社ローレライ

大手企業の傘下に入らず独立して活動している傭兵企業。
主な事業は軍事業務。
要請があれば企業・個人問わずにハイドラとパイロットを派遣する武力の提供を行っている。
直接的な戦闘以外にも、兵站・ハイドラ整備などの後方支援、新兵の訓練なども請け負っており、手広いサービスを展開している。
最近はこちらの方面でも業績を伸ばしている。

派遣する兵士は数よりも質を優先するのが特徴。
特に戦闘任務の際には必ず、自グループだけで結成した少数部隊で参加する。
その上で独立した指揮権の要請し、認められないない場合は依頼の時点で断っている。
またパイロットごとに個人差はあるが、全体的な傾向として守秘義務が強く、依頼者にすらパイロットデータを渡さないこともざらである。
なんとも癖の多い傭兵企業だが、額に見合うだけの結果を残すため評判は高く、今注目の傭兵企業である。


今回の招集に対しては「金にならない」と感じているが、立場的に断るわけにもいかないというスタンスである。
しぶしぶ、『萌え声』と呼ばれるパイロットだけを派遣している。