ENo.0398　“Neon”

「アウラ。火器についてはどうする」

画面とのにらめっこは少し休憩。コンソールから顔を上げて、暇そうに自らの髪を弄ぶ少女のほうを見やる。
尋ねると、彼女はきょとん、と目を丸くしてこちらを見た。

「……？ 何だ？」
「ふっふー」

珍しい反応に眉を寄せると、なぜか妙に機嫌のいい笑みが返る。
ぴょんっ、と飛び降りるように寝そべる“Neon”の鼻先から降り立つと、アウラは弾んだ声を返す。

「いいわよ。グランに任せる」
「あ？ 丸投げかよ」

適当な返事に思わずそう返すと、それまでの様子が嘘かのようにころっと唇を尖らせた。
ぶぅ、とふくれるその顔ならば、実に見慣れている。

「これは信頼ってゆーの！ネオンに一番詳しいのはグランでしょ！」
「あー、へーへー……ったく。都合のいい言い方しやがって」

差し当たり、いらないパーツを売るに留めることとする。
手早く打ち込むと、溜息をついて計算ツールを閉じた。
……まったく、何を考えているやら訳がわからない。

「ねえ」

不意にぱちり、と視線が噛み合う。
澄み渡る水色がまっすぐにこちらを見据えて。

それを受けて、ふと思う。
以前だったら確実に逸らしていた場面。
──このストレートすぎる眼差しから、逃げようとしなくなったのは、いつからだった？

「──名前」
「は？」

はたと意識を取り戻す。
短すぎる単語の意味を取りかねて問い返せば、にっこりと笑みを深めて。

「初めて、呼んでくれたわね？」
「…………」
「ふふふーん♪」


思わず黙り込むこちらに対して。少女はまたもにこにこと、上機嫌に笑ってみせる。
鼻歌なんぞ歌いながら、またくるくると指先で、自らの髪をひねくり回し。


そうか、と内心静かに思う。
……無自覚に、慣らされていた自分に気づかされる。
この場所に。この空気、彼らと共にいることに。

しかしまあ、それはさておき。


「…………、」
「あいたっ！？」

なんとなく癪に障って。思いきり、その額を指先で弾いた。

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