ENo.0414　Y・橘・リィンドッグ

この紫の発光体について話をしようと思う。

ユートピアの周りに浮いているこの発光物体の正体は、端的に言えば光る霧である。

故に霧と質量が同じで、沈むことも浮くこともない。

風が吹けばその流れにのるし、雨が降れば濡れる。

触れようとするならば、葉を掴むように優しくしないとすり抜けてしまうだろう。

ただ、風で飛んで行ったところで、ユートピアのそばを離れれば直に光を失う。

それは周りの霧と同化していく。跡形もなく。溶けて消える。

そのくらい曖昧で不確かなものである。



なんのために光っているのかといえば、獲物を捕食するためである。

外の世界にはチョウ・チンアンコウという生物がいるらしい。

このチョウと同じく、光によって霧の物質をおびき寄せる。

相違点といえば、チョウの光はただ光っているだけだが、この紫の光には催眠効果がある。

つまり寄ってきた獲物を眠らせて、それから捕食するといった流れだ。

獲物は痛みを感じず、安らかな眠りのままいただかれる。

そう、ただの夢ではなく、幸せな夢だ。

そして、幸福に身を委ねた獲物を…まて

獲物、捕食…この表現は間違っているように感じる。

食事を、とる。そうだ。こちらのほうがふさわしいだろう。



…本題から逸れてしまったことをお詫びする。

とにかく、この光についてまとえると以上だ。

・溶けやすく、有害な物質ではない。

・催眠効果があり、幸せな夢がみれる。

だから、そんなに警戒をしないでほしい。

なにしろ、この残像領域ではコクピットから生身で活動している人は少なく（俺が見つけられないのかもれないが。）感じるからだ。

ぜひ、俺と話してほしい、あって、直接、君の…



ああ…あと一つ、言い忘れていたことが…ある。

この、光は、…例外なく………俺も…



…もち、ろん…、…眠く…………………………………………

『＿＿＿誰かいるのか？………いるなら返事を＿、…＿』


霧に包まれた路地裏だ。
貴方はここに立ち寄ってもいいし、過ぎ去ってもいい。