ENo.0026　シャンク＝タイラー

「しかし『地獄の冷たい川底で、燃えるように輝く柘榴石』……ねぇ。随分と詩的じゃねえか」
「他にやる仕事があるってんなら、戦場で命を張る理由もないわな。俺の知ったこっちゃねえが……ま、グッドラックだな」

ハイドラを置くガレージに、朝焼けの朱い光が差す。シャンクは出撃に備えて機体の最終チェックを行っていた。

――地獄ってんなら、まさしくここが『あの世』なのかもしれねえな。
オカルトそのものの不可思議な力だ、壊れたはずの機体の残像に会うだの……
俺ァてっきり残像領域に迷い込んだとばかり思ってたが、実は死んだ末ここにいるのかも知れねえ。
死んだ先でもやる事が同じってんなら、実質的にゃ不死身じゃねえか？ま、試さねえけどな――

点検が一段落し、彼は近場で買った缶コーヒーに手を付ける。

「っげぇ、クソ不味いじゃねえか！！こりゃカンペキに外れだな……うぇっ」
口直しとばかりにピーナッツバターサンドにかぶりつく。濃厚な甘みが口の中に広がる……が、それでもまだ十分ではない。
カシューナッツを数個つまみ、十分に時間をかけてよく噛み砕く事でようやく強烈な苦みと酸味から解放されたのだった。

「ったく、幸先がわりぃな。せめて戦場じゃ神様にでも恵まれたいもんだ……」