ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

　信頼は嫌いだ。反吐が出る。
　特に霧のきの字も知らねえようなニュービーが見せる、根拠も何もねえ仔犬みてえな信頼なんてのは最悪の最悪だ。
　だから。

『暗いニュースが続いていますね……きっと、それでもあなたは勇敢に戦うのでしょう』

「ひひ……ヒャーッハハハ！ 素晴らしいですねエリオット。いつの間に霧笛の塔の仲介人を落としたんですか？」
「俺がこんなガキみてえな女にちょっかい出すわけねえだろ」
「ひひ、どーかなー、エリオットは歳下好きだろ、だってあンときも……」

『私には夢があったんです。田舎で、子犬のブリーダーをやるっていう夢が。さ、残り1週間ですが、最後までサポートしていきますよ♪』

　再び爆笑が巻き起こり、笑いすぎたアホどもが酒をこぼしまくる。
　依頼はノーリターンのフォグフロッグに来ている。だから、俺がこの音声メールを酒場で垂れ流すことは悪い事じゃねえ。俺たち全員が、フォグフロッグのライダーだからだ。
　決して俺は、晒し者にしたかったワケじゃねえ。本当だぜ。

「気にいらねェな」
「何がァ」
「闘う者が尊い、だなんて思ってられる、その生き様がだよ」
「違ェねえ。俺たちゃゴミ溜めのネズミだ。誇りだの夢だの……言ってられるこの女が羨ましいよ」

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。

見慣れない美人が現れたことで、熱気が高まっている。
粘つくような視線が一つところに注がれている。