ENo.0044　ロウシャ・ゼイルストゥラ

　ロウシャは珍しく、日が昇っても起きださずに寝息を立てていた。


　――先日、主治医であるザックに、これ以上連続して出撃させることはできないとドクターストップをかけられたのだ。

　事実、ここ何度かの帰投後は特に酷い体調不良に苛まれていた。中でも、軋むような、それでいて焼け付くような全身の痛みに対しては、自力ではどうすることもできない。ふらつく足でなんとか部屋までは戻れても、あとは床に這いつくばって痛みに呻くことしかできない日が続いた。
　ザックはそれを直接見たわけではないものの、ロウシャに毎日記録させているデータと体調の記録から容易にそれを察したようだった。

　ロウシャは当然それに納得するはずはなかった。しかし、出撃時に服用する薬がなければ、機体の操作もまともにできない。その時点で所持していた薬の数は、あと1回分。……出撃停止は呑む他なかった。この点に関しては、医者が主導権を握っているのだから。


　初めて休暇の届けを出す。それは案外と気が抜けるほどにあっさり受諾された。まずは1週間、それで体調が回復しなければもう1週間。それでもだめなら――

　「こんにちは。いまよろしいですか？」

　ほんの少しだけ先のことを考えながら重い頭痛に頭を抱えていると、唐突に通信端末から声がした。
　曰く、リソスフェア要塞へのハイドラ大隊出撃の任がおりた、と。


　……7日分とったはずの休暇は、いつの間にか6日分に変更されていた。

何らかの理由によりハイドラに縛りつけられたライダーが集まる。掃き溜めとも言う。
　
一部メンバーの素行不良により世間からの評判は芳しくない。

音楽専念。