ENo.0276　ローデット・ダイス

「言ったよな、飲んだら錆びるって」

「…………悪い」

「ったく、そうまでして飲みたいかねえ」


飲みたいかと言われれば修繕費＞飲み代なわけで、上物でもない限りは飲む気なんてしなかった。
出てきた酒は高級そうではあったがただの合成酒、いわゆる安物だ。
横でバルト一人が飲んでいるのが羨ましくて飲んだとかそういうわけではない。
事実、途中までは酒など飲んでいなかったのだから。

珍しくバルトのおっさんから相談事を受けた。
内容は簡単に言ってしまえば『死亡許容』のことである。
誰がそれを選択しようと知ったこっちゃない、それを選ぶ奴は選ぶし、命が惜しい奴は選ばない。
因みに私は後者だ、目的がある以上、戦場で死ぬわけにはいかない。
どうやら、チカもリタ嬢も止めるもんだから、流石に戦闘狂のおっさんでも悶々としだしたんだろう。
二人とバルトの考えは違う、戦場で生きて死ぬような考えを持っているバルトのおっさんと相容れない、
だから散々迷ってこっちに聞いてきたんだろう、どうするべきか。

事実、私だってそれを止められるわけでもない、だからお互いが生き残る為にサポートする。

そんな話をバルトのおっさんだけが酒を飲む中話していた。
腐れ縁でこうやって僚機を組んでいるが、こうやって話し込む機会はそうなかった。
真剣に話したり、笑って冗談を言ったり、
次が要塞攻略の前とは思えないくらいにその日は色々話した気がする。



その時に、自分の話をした。
素面で話すのがなんとなく嫌で、その時に酒を飲んだ。
酔えるのかわからなかったが、酔える気分くらいにはなれるだろう
それくらいじゃないと、話すことができなかった。



自分の話をしたのは、正直いつ振りだったのか覚えていない。
この体になってからは初めてだったかもしれない。
水銀を探してくれとか、そんな話はしたことがあるかもしれない。
ただ、その水銀『ヴァリアブル』の価値についてだとか、そこら辺は人間だった時も言った覚えがない。
言ったら裏切られるって思ったんだ。
事実、私の片目は裏切られて売られたわけだ、探す方がリスクが高いから諦めた方が早い。
なのに、眼の話をしたら、おっさんはこっちを心配してくれた。



「ほら、これで動くか？」

飲んで結局動かなくなった右腕、はぁ、と溜息をついて動作を確認する。

「ああ、動く……今度から気をつけるよ」


「んで、さっき運んできたのが僚機組んでるおっさん？」

「そうだけど、それが何」


「昨日どこまでしたの」

「」
「動けなかったから！泊めてもらっただけだ！！だいたいあのおっさんのとこにはリタ嬢がいる！」


「へー、まあいいや。散々笑わせてもらったし」

「黙れよ！いいからさっさと飲んでも支障ないように開発しとけ！！」


「はいはい。そんな調子で戦場行けるのかよ」



「……相棒を支援して死なせないのが私の仕事だ」

とあるものを求める為の集まり場。
それが何であろうと構わない、情報収集の場でもある。


制御*5、ユニオン購入は適当