ENo.0301　花火や　紅扇

先週の戦いが明け、弾薬代の勘定が済んでのち、
一日、二日は、残ったカネでちびりちびりとやりながら、
どうしたものか、と考え込んでいるような顔して、いじけていた。
アセンブルの発注ミスで、ペラペラの装甲を積んで出撃することになったカルキノス（ハイドラの名前）は、
結局前線に出る以外の融通を利かせられないライダーの未熟で、あちらこちらをガタガタにされて帰還した。
もう一撃もらっていれば、火も噴かずプスンとでもいって動かなくなっていただろう。
カニミソみたいなライダーは、熱のない粒子の炎に灼かれて操縦棺で蒸し焼きになっていただろう。

整備費払えばパーツの一基程度ぶんのカネしか残らない。
それなら次は戦場の隅ッこの、遠くのほうから適当に撃っておればいいだろう。
最低限の報酬は貰える。

だけど奇妙なもので、サケとタバコに酔い散らした頭の中で、
気がつけば次に前線へ出るための方法を考えているところがあるのだった。

“カネがなくてもできるパーツの調達方法”に思い至って、酔っ払いは独り、苦笑いをこぼす。
ぐるぐるぐるぐる、天地も前後も引っくりかえッちまってら。
見も知らん他人に無心して回ろうなぞ。

だが恥も外聞もあるものか？
いちど酔ったらやめられぬ。
火薬と死の濃い煙の味は。

外れに格安で借りたガレージ
中心部から離れたがらんどうの野原にぽつねんと建っている。
利便性は極悪。