ENo.0008　エリカ＝ヒースハイデ

巻き毛の女はチョコレートを口の中に放り込んだ
甘くておいしい　彼女はごきげんに顔を綻ばせる

「も～～、君たちは駄目」
興味深そうに寄ってきてすんすん匂いを嗅ごうとする猫からチョコを避難させる
猫にチョコレートは非常に危険なのだ
ちなみについ先程エリカにもチョコをひと粒分けてやった
というか頼み込んで食べてもらった

エリカは物を全く食べない　巻き毛の女も彼が飲食をする所を今まで見たことがない
これまでも食事の話題については深く触れた事はないため彼の味の好みなどがわかるかもしれないと考えた
チョコレートが気に入れば以降も継続して食べるようになるかもしれない
彼が猫を好んでいるのと同じように


巻き毛の女はヒースハイデの脚部の上に座るエリカにチョコレートを差し出す
エリカは巻き毛の女の指ごとチョコを口に含んだ
若干動揺する巻き毛の女　無表情のまま口の中でチョコを転がすエリカ
固形物が歯にぶつかる音が聞こえる

「……ど、どうですか？」（今ふにゅってした）
「どうもこうも……普通？」
「おいしいとか、甘いとかは？」
「知らねーし　強いて言えば何だ　溶ける？ぬるい氷的なアレっつーか　ん～～～～～～～～」

エリカは何やら考えながらチョコを溶かしていた
もし彼の表情が人並みに動くなら今はきっと顔をしかめているに違いない　巻き毛の女はなんとなくそう感じた
考えに考えた末に彼は「なくはない」と結論を出した
つまり好みでもないという事だろう
そもそも味を感じられているのかも怪しい
普通の人間ならチョコを食べて出る感想が「溶ける」になる確率は極めて低いと思われる
これは上司への報告案件だ
エリカに関する事は基本的になんでも報告義務はあるが今回は特にという意味だ



その後エリカは激しい咳に苦しんだ
ヒューヒューと細い呼吸音　彼は床の上に嘔吐した
巻き毛の女は手早く吐瀉物を片付ける　彼女は主に猫の吐瀉物の処理で慣れていた
そのまま操縦棺の中に引きこもり現在に至る
彼の体は猫毛に続いてチョコレートも受け付けないようだ
難儀な体質である


後日エリカにはチョコレート以外の様々な食べ物も食べてもらったが結果は同じであった
何を食べさせても全く症状が変わらないため流石にテストは中止された
申し訳なさそうに謝る巻き毛の女にエリカは興味なさそうに首を振った
そして懲りずに猫を吸引する始末である
とことん自分の体の事には興味がないらしい　そのくせハイドラが関わると意見を譲らない事が多い
巻き毛の女は不安そうに彼を見つめながらチョコレートを口の中に放り込んだ

*にゃー*

（猫用ベッドが置いてある）