ENo.0023　アンナ・T・パラボ

樽おばさんの相方の、タモさんが死んだ。
いや、昨日今日の出来事ではないけれど、
今から書く日誌の内容を考えると
一応触れておかなければならない。
ギルデン太郎はタモさんが死んだことを
noobnoob言ってゲラゲラ笑うと思ってたんだけど
そんなことはなかった。
ギルデン太郎ちゃんも人なんだなあって思った。
それに対して私は樽おばさんに鬼のようなメッセージを送った気がする。
鬼のような、というのはHMXシリーズ標準装備の
AI基準であって、私（つまりアンナちゃんだね！）から見ると
間違ったことは何ひとついってないので、私は正しいと思う。

でもあのギルデン太郎ですらいっちょ前に何か考えるところがあったみたいで、
何の感想も抱けなかった私とはステージが違うんだなあって思った。

残像領域において、
ただでさえひどい私のアンテナに
ノイズでないものがたどり着くことのほうが珍しい。

その中には無念、悔恨、恨み節がめちゃくちゃいっぱいある。
まともな人間に聞かせたら頭がおかしくなりそうだと思うけど、
私は仮にもHMXシリーズのオリジン（長女）であるので気にはならない。
で、タモさんは何を思ったのかなあってちょっと考えたりするけど、
そもそも保険に入らないやつは多分お金が死ぬほどほしいか死に場所を求めているはずで、
そんな連中が無念やら恨み言を吐くはずないな、と思い直した。
よくよく考えたらこの日記でふれたハイドラライダーたちは全員保険に入ってなかった。
保険に入っているまともな、理性的なライダーに聞いてみなければ
こういう話のことはわからないと思った。
でも私にはまともな知り合いなんていないわけだった。
私は一人だった。
その事実について他に何か感情が浮かぶかというと、別になかった。
人に持ち込むほど重要な思考とも思えなかった、この日記の内容は。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。