ENo.0579　オルハ・Ｄ・マインド

「……、………ッ」

なんだかんだ、撃墜されたことはなかった。
味方が撃墜されたのだって何回か見たけど、一回の戦場でこんなことはなかった。

一緒に戦場に行ったやつが、隣のやつが、前にいたやつが、後ろにいたやつが、撃墜され離脱していく。

「……、マジかよ………」

自分の機体の性能が完璧だとは思えない。いつも、これだ！みたいなのがなくて、まだまだ改良するところがあるって思ってる。
運が良かった。おれのハイドラ…アラクオーンはほぼ無傷で帰還した。


ため息と、うまくまとまらない設計図。
この間までものすごく調子が良かったのに、考えがぐちゃぐちゃして、それがほどけるどころかどんどん絡まっていく。
「マスター・オルハ」
「あン？」
「次の戦場のデータです」
この前の戦場のことをずっと考えているオレに追い打ちをかけるように次の戦場の話。
コマルが持ってきたデータを映し出せば、ぐちゃぐちゃした思考が一瞬クリアになる。
クリアになって思い浮かんだことが一つだけだからだ。


やばい。


この戦場は…このハイドラの振り分けはまずい。
データを見るとサポート型が多く、攻撃手が明らかに少ない。

「マジで…死ぬンじゃねぇの…？」

多分、引きつったように笑っていたと思う。
泣きわめいてだだをこねる年齢でもないし。


例えば…例えばの話だけどさ、この世界にオレを引き入れたナニカがあったとしたら、それはオレに何をしてほしかったんだろう。
役割とか使命とか、あるとしたらそれは何なのか。

或いは、そんなものは全くなくってさ。
単純にさ、死んでこい、って感じなのか。

「マスター・オルハ。アセンブルの仮案を作成しました。ピピッ」
「……」
何も命令してはいないが、こいつは日々どんどんと吸収してるのか、人工知能の方が発達してるのかわかんねぇけど、色々と提案してきたり話しかけてきたりする。
「お前はどう思う？オレは…何で、何の為にここに来たんだろう？」
「分かりません」
「……だよなぁ」
「――ですが、マスター・オルハの死亡を望みません」
「……」
人間の感情を込めたような言い方や音声ではないし、機械に何が分かるって少しは思ったけど、
それでも、そうインプットされてたとしても――
「…おまえ、そういうのさ……どこで覚えてくんの？」
一人ってカウント出来ないかもしれないけど、一人でも誰かがこの世界で思ってくれる奴がいるならもうちょっと頑張ろうかって思えるモンだな。

「もうちょい、がんばるわ」
「はい」

オルハが臨時で作ったユニオン。
反応をあげ隊。