ENo.0688　チェシカ

白い部屋を出た先の白い廊下を歩く。
体調の具合を検査する―と、スピーカーから指示された部屋へと歩いていく。

ここに来てもうじきに8週になるが、未だに施設に人の気配がない。

言われた部屋の扉の前で立ち止まる。大きい…無機質な…取っ手もない扉だ。

「……。」

「………あの。」

「あの…チェシカです。」

　―――――……。

音もたてずに扉は開く。
その先には真っ白な部屋と中央に椅子が一つ。

椅子にチェシカが掛けると、何も存在しない目線の先に頷いたり、喋りかけてだした。
いくらかの時間の後にポーンと軽い警告音のようなものが鳴ると、チェシカの周囲に光粒子モニターがポップアップした。
何重にも音を立て、それらは彼女の周りに重なり出す。


グラリと身体が揺れる。
受身をとる事もなく床にその身が叩きつけられた。

目の前には小柄な白衣を着た女の人が居た。

『こんにちは、チェシカさん。調子はいかがですか？』
「あっ……えぇと、おかげさま？で大丈夫です。」

にこにこと笑うその女性を見て、気恥ずかしくなって小声で返事をする。
その様子を見て女性は微笑みながら目の前の機材に何かを打ち込んでいた。
―問診は続く。

『最近は、ゲームの調子も良いみたいですね～。特に最新のものは、目を見張るものがあっていいですね。』
「……ぁ、ありがとうございます。」
『ここ数回一緒になっている▓▒░░▒▓とか、フリーなら▓▒░░▒▓の申請とかしてみたらどうですか～？あの人、結構な▓▒░░▒▓なのよね…』
「▓▒░░▒▓…？」

目の前がグラグラと揺れ出す。

「ごめんなさい……なに、何を言っているのか分かりません。」
『大丈夫！？…気分が悪いの？？』
「……ここ、どこ？私……なにして……？」

目の前に火花が散る。

地面が回る。

音が遠い。



――――――――

『記憶障害ですかね―。』

『そうでしょうね、頭に電極を差し込んでいるんですから、何らかの影響が出てもおかしくないでしょう。』

『どれだけもったんですか…7週？まずまずかな』

『もうちょっとメンテナンスすればリカバリーできるんじゃないですか？せっかくの機会ですし長くもたせないと』

『エラー条件をもう少し緩くして………』

倒れる少女を囲むように、研究者風の装いの者が数人…――。
足元の人物に目を向けることなく議論に花を咲かせていた。

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