ENo.0090　ハク

　にぎやかだ。

　ひとの、ねつだ。

　よくわからない、けれど。
　なにかがちがう、らしい。

『…………』



風が叫ぶのを止めた。傍らのそれとともに、虚空を眺む。

ないでいる。

──凪いでいる。
濁った空が、呼吸を止めた。




『……はじまる、ね』



己だったそれを見上げて、笑った。

少年は何も分からなかった。彼等の熱量の所以も、過酷さも、そもそもの陰謀論も、何も理解は出来ない。

ただ、偶然の巡り合わせで。その渦中に訪れるだけだ。


それでも。何処か居心地の良い。……かえることが惜しく。どうか此度は、かえりたいと思う。
かつて波立ったことのない、培養された身体が、仄かに。彼等と等しく熱を持つ。


　……かぜ。

　だれかのかぜが、いまは。とても、ここちよい。