ENo.0649　アキラ・ハリアエトゥス

『リー・インがいない』

集結したライダー達が、段取りを建て始めてから誰かが言い出した。
最初に言い出したのが誰かは知らない。しかし、それは間もなくして概ね全ての作戦参加者に知れ渡った。
……まあ、俺はそもそもあの通信で聞いた声と、噂でしか彼のことを知らないので知る由もなかったのだが。

しかしどういうことか。あの焚き付けるような広域通信を叩きつけてきた主がこの戦場に来ていない。
もう一人の仕掛け人であるギルデンロウは来ている。あれがギルデンロウらしいと遠目に見かけた。

「『あとはお前の仕事だぞ』……だったか。そういう意味だったのか？」

集結地点付近を歩き回り、やっと見つけた自動販売機で缶飲料を購入する、
ここは俺のいた廃墟に比べればまだマシな寒さだ。あの町は寒波が届いて抜けていかない地形だったらしい。
防寒着を着ていれば凌げる程度の気温。概ね氷点下２度くらいか。



……さて、ここがどこかと言えば集結地点だ。例の作戦に乗った連中が集まっている。
戦域をいつも通りブロック分けし、その戦域〈ブロック〉ごとに役割分担し、備える。
俺たちの戦域も役割分担が終わり、休憩がてら水分補給に来たというわけだ。

俺、そして俺の“パンディオン”の役割は至って簡単だ。
光の禁忌、いや徳の禁忌だったか。あの第二の禁忌“ルミナス”をマークする。
ひたすらアレを攻撃し、その気を惹き続ける。
時間切れで　やつが撤退して行ったなら残敵の掃討に加わる。実にわかり易いポジションだ。

今回のために“パンディオン”も大分改造した。
速度を稼ぐために踵にホイールを。ルミナスを逃さないためにセンサー複合ユニットを。
少しでも軽量化するために砲塔を撤去し、代わりに一本腕〈アインハンダー〉を。
防御面でも大分強化されたはずだ。制圧行動、火熱律動防御性能を獲得している。

要となる飛行ユニットも新造した。俺の“イカロス”シリーズのNo.5。[イカロスⅤ]幻想推進飛行ユニット。
速力の問われる今回のポジションの為に作った、これまでで最速のイカロスだ。
飛行性能も十分……実を言うとオーバースペック気味だが、まあ仕方ない。

僚機は火力役に配置されていた。
大火力でとにかく撃ちまくり、叩くまくり、ただただがむしゃらに立ちはだかる敵を駆逐する担当。
花形というわけだ。ならこちらは、少しでも気持ちよく暴れられるように禁忌を抑え込みにかってやろう。

熱い缶コーヒーを飲み干し、会議中のテントへ戻る。
仕掛け人の目論見はわからないか、まあ。
たとえ罠でも砕いて通るまで、だな。

ユニオンに加入していたほうがいい、と聞いたアキラ・ハリアエトゥスが設立したユニオン。
正式に届け出は出しているがメンバーは一人であり、いわゆるペーパーユニオンである。

加入希望者は一応募集しているが予定はない。