ENo.0154　パスタの妖精

「あれ、もうおしまい？」

霧の晴れ渡った空を仰ぎつつ、金髪の妖精は問いかける。


「えぇ、残念ながら。エンドロールの真っ最中。」


「そっ...か。
まぁ、別に知ってたからいいけど。ちょっと言ってみただけ」

けらけらと朗らかに笑ってみせる。



「楽しかったです？」


「答えなくても知ってるくせに。」


「まぁ、そうですね」

ニッコリと答えると、金髪の妖精の周りを歩き始めた。


「これで私もお役御免かぁ。こんなでもいい経験になった？」


「えぇ、とても。」

素直で残酷な返答。尚も周り続ける。


「まぁ、聞かなくても分かってたけどね。」

けらけらと笑って返す。素直で残酷な返答。



長い沈黙が流れる。


「楽しかったです？」

ぴたりと足を止め、問いかける。


「えぇ。とても楽しかった。
いっぱい敵を倒したし、
いっぱい動いたし、
いっぱい買い物もした。
いっぱいお願いもしたし、
いっぱいお願いもされたし、
いっぱい遊びもした。
いっぱいいっぱいだったけど、
いっぱいいっぱい楽しんだ。」


「私も楽しかったです。
絵を描いてもらって、
みんなで集まって、
みんなに親切にしてもらいました。
いっぱい考えて、
いっぱい話して、
いっぱい聞いて、
いっぱい試した。
私はこの世界に、これといって興味も関心もなかったけれど、
それでも、この世界があったおかげで楽しく過ごせました。」


「ふふ、知ってた」


「でしょうね。」


「...」


「もう、いきます？」


「あ、ちょっと待って。
これだけはけじめだからねーっと。」


そう言うと、金髪の妖精は獲物をぶんと振り、目の前の地面に突き刺す。


「今回はわがまま言っちゃってごめんね、電磁アックスは流石になかったかなーって自覚してるから。許して？」

そう言うと、地面に刺さっていた獲物はカタカタと震え、金髪の妖精のもとに倒れた。


「...ありがと。」

そう言うと獲物を抱きしめ、そっとしまう。


「おまたせ。」


「もういいんです？」


「えぇ、お願いね。」











金髪の妖精は光の中に溶け崩れてゆく。
歴戦の傷を癒すように、
心の安寧を願うように、
残されたものを慈しむように。


光の中に消えゆく中で、ふと湛えていた笑みが消え、こちらを見る。
幾多と見た表情。



｢私たちはいつ死ぬんですかね｣



そう、問いかけるような素直で残酷な表情。


輝きが薄れ、光が消えゆく。

そして、霧戦争に関わる全てのものに敬意と感謝とちょっぴりパスタの香りを添えて。


『ごちそうさまでした』

ぱすたさんだよ🍝


格闘5だよー