ENo.0022　アグロヴァル・エッフェンベルグ

ハイドラに乗った時の感覚は……どうだろう、少しは取り戻せてきただろうか。
こればかりは場数を踏んで取り戻していくしかないのだろうけれど、問題は機体の方だ。
定期的にメンテナンス等は行っていたが、やはり5年と言う時間経過の重さは大きい物だった。

……うん、ありていに言うとそう、【機体に付けてたパーツが古い】。
5年間残像領域の情報をあまり収集していなかった方も悪いのだが、機構がだいぶ古いのだ。
そこそこ型落ちしたパーツ、企業間での設計図の使用権、単純に進歩していた技術面……
設計書を見さえすれば、パーツがどんな造りになっているか分かる程度の技量はある筈だが、如何せん時間が無い。
恐らく、以前来た時のように何でも作れる状態になるには時間が足りなさ過ぎる。

そこで、だ。 俺の方では必要そう、かついい具合に作れそうな設計図だけを集めて行こうと思う。
その他はいつも通り買う、よその企業の設計図はこっちの方で作れる物の設計図と物々交換して貰う
それが今回の時間があまりない中では効率的に機体整備を完了させられる鍵……だと結論付けた。

そうなると、必要となるのは人脈、及びコミュニケーション能力……
……不味いな、以前来た時にはあまり知り合いと言える程の人、居なかった気がするぞ。
いや全く居なかった訳じゃないけど、二人は僚機だった彼等だし(俺の自分勝手な理由で)留守番だし。
他に話したりしてた人も今回の作戦に参加しているとは限らない。
話す事に関する不安はないが、あまりにも人脈が絶望的過ぎる……これは早急に何とかすべきだろうか。


「……カッツェ」
『なぁに、ご主人』
「君、今は黒猫に見えなくもないし、ちょっとその辺で猫好きの人を…」
『やだよ、そんな安い客引きみたいなの……』
「うん、知ってた。 やっぱり戦場で気になった人に声かけてくかなぁ……」

正式名称は『フラーレス(F) ワールド(W) アドベンチャラー(A)』である。
『フラーレス世界旅団』と言う別称もあるが、特にどっちで呼べと言う事はない模様。

とある世界にて、世界間の移動を自由に行う方法を確立させた人物が、
己の探求心・知識欲を満たす為に作りだした個人的秘密組織。
構成員は設立者を含め5人ほどと規模は小さいが、あくまで趣味の範囲なのでその程度で良いらしい。

組織の正式な構成員には、設立者の部下として様々な世界の調査を命じられる……と言うと堅苦しいが、
特に調査の期日等は存在せず、自由に旅して良い位の緩さである。
調査する手が足りないと言うのであれば、派遣された構成員が現地で手伝ってくれる者をバイト感覚で雇う事も認められている。

定期的、不定期に関わらず専用の端末でデータ送信をすればある程度の収入が約束され、
活動拠点としてどんな世界からでもアクセス可能な部屋を支給される。 ホワイトだね！(？)

余談ではあるが、
『組織名？ 万が一所属を聞かれた時名乗るのに必要だから作っただけで、通称は略称で文字数少ない方にしただけよ』
とは設立者の弁。

今回の戦場でも面白そうな事になる気配がした為、バイト感覚で来てくれた人に対しても可能な限りのバックアップを約束している。
具体的に言うと、この残像領域の調査時には多少広い程度の居住空間と、不自由ない程度の食糧(主に食材)が提供される。
……料理が出来ない人はどうするか？ 支部長(仮)のアグリオ(22)にでもたかりに行くと良いよ！！