ENo.0085　萌え声

前回の私の判断は概ね正しかったと言えるだろう。
問題はこの位置をキープできるか、そのためには正しい判断を続けなければならない。

各企業の通信が入っている。
どこもかしこも情報を提示しすぎているが、手足となるハイドラ乗りを確保しておきたい意志の現れだろうか。
その状況は"質"を売りたい私にとって良くはない。
質が求められるのは量があってこそだ。
物量戦時においては、質の高い兵士に倍の金を出すより、倍の兵士を雇うべきだと企業は判断するだろう。
この判断に至るのは容易に予想が付く。

やはりこの争いは売名を最優先にすべきだろう。そして落ち着いた平時に名前を活用させてもらうのが正解だろう。
この問題についてはそう判断する。

気になるのが各企業の戦闘システムだ。
シルウェストリスの『フィネデルシェロ』、説明だけ見れば戦場の常識が変わるほど強力。しかし問題は信憑性だ。
通信相手が変わっている、企業としてシステムに問題があるのは明らかだ。
そんなところからの情報を信じられるか？　NOだ。
どんなに強力なものでも実現不可能なら意味がない。
そんな不確実なもののために動くよりは、今確実な一手を追うべきだ。

しばらくはヒルコ教団に融資をするのが良いだろう。
ここもどうにも胡散臭いが、受けられる恩恵は悪くない。
そして目立ちすぎるマテリアルベルトがスケープゴートになっている。
粛清対象からも外されるだろう。
この判断も間違っていないが、どうにも判断が間違ってないと確信がありすぎる。
決断する時はもっと不安なぐらいがちょうどいいのだが……未来の私が取り越し苦労だったと言えることを今は祈ろう。