ENo.0163　鳥瞰するメーテルメテルカ

シルウェストリス航空が提供すると約束したシステム、
フィネデルシェロ──『空の終わり』。

噂によれば──あくまで噂によれば、だけれど。
時空震を起こし、別の世界へと連れて行ってくれるらしい。

──なんとも、夢のある話じゃあないですか。

私の場合、夢だと困るわけだけど。



私が出した答えは至極単純。
システム『フェネでルシェロ』を利用しての、残像領域からの離脱。



勿論、この身を一生実験道具として使い倒すつもりのマテリアルベルトが許すはずはない。
だから、裏でこっそりシルウェストリスの研究者と連絡を取っておいた。

セクション1、サルガッソーの外れに機体＝私の体を降ろす。

──やがて、生体反応が幾つか近づいてきた。


交渉材料の、新型速射砲の検証データを固く握りしめる──実際に握る腕も実体も無いのだけれど。
脳が生み出す感覚は、確かに、指に食い込む書類の束を捉えていた。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが……無い。何処かへ消えてしまったかのようだ。
ある一人の幽霊が、それについて聞かれるとニヤリと笑う。




「どこだと思う？メテルカならわかんじゃねえかな。」