ENo.0065　夜明けの口笛吹き

愚かであることは、民衆の最も基本的な権利だ。
愚かでなければならない、と云っても差し支えないだろう。

私はこれまでに、65の時代を渡り歩いてきた。
人々が秩序を持たない時代を経験した。
輝かしい大英帝国の全盛期にも、
翳りが差した日の夕焼けも、
クラウトどもが仕掛けてきた日の紫煙も、
私は見ていた。


私の経歴を知る者があれば、彼の者は私を歴史の証左だと云うだろう。
それは半分が正しくて、半分は間違いだ。
私は断片を見ているに過ぎず、いつだって決定的な場面を見逃してきた。

私は不死だ。
正確には死ぬのだが、夜明けが訪れれば元の姿に再生している。
きっと霧のようなものだと思う。
いつの間にかなくなって、いつの間にか現れる。
実態は掴めず、ただ在り続けるだけ。
もしも霧に意思があるのならば、私は霧と友人になれるだろう。

なぜ私が不死の特徴を備えているのか、私にだって分からない。
死なないということは、力の現れにはならない。
むしろ誰よりも無力だ。
無力だから死なないのか、死なないから無力なのか……。

虚しさを知っているから、謳歌してもらいたい。
私の代わりに、血の華を咲かせてほしい。
胸を貫くような高揚を、息の切れるような感嘆を、
私の代わりに、体現してほしい。

ポーンたちだけではない。
この残像領域に生まれ得た、すべての生命に。







エマニュエル・スミスという男がいた。
真の意味で、命を賭しているやつだ。
彼には絶対に敵わない、と私は思う。
だいたい、物語はそういうふうにできている。

多くのハイドラ乗りは、あと一歩を超えられないでいる。
私と同じだ。安全圏に留まる人たち。
せっかく落とせる命があるのに、何に縋る必要があるのだろうか。
私が望んでも得られない死という選択肢に向き合って、
ポーンたちと鎬を削り合って、
擦れて、砕けて、散って、笑って、笑って、
死ねばいいのに、
どうして、
無為にしてしまうのか、
輝きに泥を塗ってしまうのか、
もったいないと思う。もったいない、ああ、無駄遣いだ。
そのような、命を、
縋って、
恐れて、
でも死なない、
セーフティを何重も敷いて、
画面越しに見ている、
諸君らを、
現実に連れていってやりたいのだ。
救ってあげたいのだ、魂を？
諸君らを？

私違自う身を！

Cafe ＆ Maintenance Mer-Millia

巨大樹木の中から、機械の大百足を探せば良い。
その樹の足元に、腕のいい整備士――あるいは料理人のいる店があるのだ。

カフェ＆メンテナンス『メル・ミリア』は、今日も密やかに営業を続けている。
禁忌戦争を生き抜き、霧とともに消えたとされたハイドラ大隊から戻ってきたと噂されている店主は、もはや多くを語らない。ただ、樹木に絡みつくように“眠っている”機械の大百足は、その時の店主のウォーハイドラだとされる。
時々たまに、思い出したように起き上がって、生きているかのように周りを歩き回るのだという。だから、この辺の木の根は金属の多脚にずたずたにされてしまって、あまり真っ当には育たないんだそうだ。店主はそう言って笑っていた。

今日のおすすめは、禁忌戦争で破壊されたと言われる要塞のひとつを模した店主手作りのケーキ。

！店および店主（ENo.7サブ）の既知可　4期既知（ENo.4）も可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/decoherence/union.html

（整備極ユニオンです。購入はユニオン主の独断。）