ENo.0110　『Phantom Beast』

呼吸が重い。
格闘火器を中心にした戦い方を試してから翌週、ヨナの身体を襲った不調はそれだった。
選んだパーツの影響もあるのだろうが、どうやら思った以上に身体に負荷がかかっていたらしい。
呼吸が重たく感じ、指先を動かすのも億劫に感じる。ベッドの上から身体を起こすと、まるで鉛のようなだるさが襲いかかってきた。
この世界で出会ったハイドラライダーとの会話で、自分の身体をもう少し労ると決めたばかりだというのにこれだ。

「……これでは怒られてしまいそうだな」

一人、そんなことを呟いてベッドから離れる。
不調は確かに感じるが、幸い全く動けなくなるというわけではなさそうだ――これなら、今日の出陣はなんとか切り抜けることができるだろう。
どれだけ不調を感じても、見なかったふりをして敵を討ち取らなくてはならない――ヨナにとって、戦争とはそういうものだった。
ハイドラライダーは遺跡を調査するために派遣されているらしいが、これもまた一種の戦争だろうとヨナは考えている。

「構成は……また元に戻しておくとして……今日は戻ったらしっかり休むことにするか……。多分、薬を飲めばしっかり眠れるだろうし」

簡単に今後の予定を立ててから、ずっと音をたてていたラジオ端末の電源を切る。
その後、簡単にシャワーを浴びて目を覚ましてから、いつも着ている軍服に身を包んだ。
一回の出陣のたびに洗濯しているので清潔だとは思うが、どれだけこの世界に滞在することになるかわからない以上、そろそろこの服だけでは厳しいかもしれない。
時間があるときに、予備の服も念の為に購入しておくか――時間があるときに済ませる用事のリストに加え、ちらりと窓の外へ視線を向けた。

窓枠に切り取られた景色は、はじめてここに来たときよりも不穏なものを感じさせる。
これ以上大きなことが起きなければいいが、おそらくそれは難しいだろう。
きっと、自分たちハイドラライダーはもっと面倒なことに巻き込まれていくだろうし、死者もどんどん増えていくことが予想される。
そして、最悪の場合は――自分も、エセルバートと同じ未来を辿るかもしれない。

そこまで思考を巡らせて、ヨナは深く溜息をついた。
この世界と同じように、霧がかってはっきりと見えない道を行くことが、少しだけ――ほんの少しだけ不安に感じた。

――しんとした森の奥の奥深く。
簡単な墓がすぐ傍に作られている家屋の窓には、時折人影が映るらしい。

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主に自分用ユニオン。整備を中心になんやかんやしていく予定。